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【ボルドー2024】逆風を超えて生まれたクラシックな1本たち

2024年のボルドーにおけるポイヤックは、収量が平均29.5hl/haと主要4アペラシオン中で最も低く、その厳しさが際立った年でした。冷涼な春と多雨の夏により病害圧が高まり、特にミルデュー(ベト病(downy mildew)との戦いは過酷を極めました。それでも、丁寧な畑管理と果敢な判断により、素晴らしい完成度を誇るワインがいくつも生まれています。 ラフィットは果敢な対応の末、わずか11hl/haという収量でありながら、気品あるアロマと伸びやかなテクスチャーを実現。一方、ムートンは雨中での収穫となったものの、厳選されたぶどうと新技術の導入により、重厚で構造的な味わいを保ちました。 また、ポンテ・カネやピション・ロングヴィル・コンテス・ド・ラランドは「リスクを取る」選択をし、粘り強い収穫作業と穏やかな醸造で、味わいの奥行きを持ったワインに仕上げました。ブドウの成熟を待ち、酸と果実味、タンニンの三位一体が見事に調和したワインには、クラシックな美しさが漂います。 この年は、果実の凝縮感というよりも、構造美とフレッシュな酸、そしてエレガンスが光るスタイルが主流となりました。タンニンは時にタイトで厳しめに感じられますが、それがむしろワインの骨格を際立たせ、長熟のポテンシャルを示しています。

2025.06.01
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【ボルドー2024】サン・テステフ、苦境の中に輝く「静かな主役」

2024年のボルドーは、雨と日照不足に悩まされた非常に難しいヴィンテージでしたが、メドック北部のサン・テステフは、そんな環境の中でも際立つ存在感を放っています。むしろこのヴィンテージの「静かな主役」として、驚きの完成度を誇るワインがいくつも登場しました。 平均収量は33.6hl/haと昨年から42%も減少。それでも、手間を惜しまぬ丁寧な作業と判断力が、見事に実を結んだ印象です。中でもモンローズ、コス・デストゥルネル、フェラン・セギュールは、今回のヴィンテージを代表する完成度を示しました。 例えばモンローズでは、ぶどうの未熟果を全区画から手で取り除くという、かつてない作業を実施。100人の収穫スタッフを動員し、38hl/haという質重視の収穫量に抑えました。加えて「Terrasse III」という新しい区画のキュヴェも登場。リリースこそされないものの、砂礫と砂の土壌が生み出す張りのあるタンニンと鮮烈なエネルギーを表現した興味深いワインでした。 また、フェラン・セギュールは全区画から採取した15種の自生酵母で醸造を行い、サン・テステフの土地の複雑さと繊細さを見事に表現。ラフォン・ロシェやル・ボスク、メイネイといった実力派シャトーも、価格以上の価値を感じさせる一本に仕上がっており、ヴィンテージの割に非常にコストパフォーマンスの高いワインが揃いました。

2025.05.31
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