
2025.07.12
ワインと魚介類の相性 – 「生臭み」の科学的解明
ワインと魚介類の組み合わせにおいて、多くの愛好家が悩まされるのが「生臭み」。この現象は単なる感覚ではなく、科学的に解明されつつあります。今回は、メルシャンの研究をもとに、なぜこの生臭みが発生するのか、どんなワインと魚介が相性が良く、どの組み合わせで避けるべきなのかを深掘りします。
なぜ生臭く感じるのか?メカニズムの解明
魚介類とワインを口にした後に感じる「生臭さ」は、実は“匂い”であり、味ではありません。鼻をつまんで飲むとこの感覚がなくなることからも、香り成分が主な要因であるとわかります。
この匂いの正体の一つは、魚介類に含まれる不飽和脂肪酸がワイン中の「鉄イオン(Fe²⁺)」と反応して生成される(E,Z)-2,4-ヘプタジエナールという揮発性の化合物です。特に干物のような酸化された魚介にこの反応が起こりやすく、生臭みを強く感じさせる原因となります。
相性を左右する要素とは?
①ワインの鉄分量
生臭みを強く感じさせる要因のひとつが、ワイン中に含まれる「第一鉄(Fe²⁺)」の濃度。鉄分が多いワインは、魚介類の脂肪酸と反応して匂い物質を生成しやすくなります。一方、鉄分の少ないワインであれば、魚介類と合わせても生臭さを抑えられる可能性があります。
②魚介の種類と状態
イワシやサバなどに含まれるEPAやDHAといった不飽和脂肪酸が多い魚ほど、生臭みを発生させる傾向があります。また、干物にした場合には酸化が進み、生臭みをより強く感じさせます。
実験的アプローチ
研究では、ホタテの干物と69種類のワインをペアリングして、生臭みを5段階で評価。生臭みが強く感じられるワインには、赤・白問わず、共通してFe²⁺の濃度が高い傾向が確認されました。この事実は、魚介とワインの相性が“品種”や“色”だけでなく“成分”に強く依存することを示しています。
なぜ戻り香が重要なのか
人間が匂いを感じる経路には「立ち香(オルソネイザル)」と「戻り香(レトロネイザル)」の2つがあり、生臭みは特に後者、つまり口中での香り立ちで強く感じられます。テイスティングにおいて、戻り香に意識を向けることが、ワインと料理の相性を判断する上で非常に重要な鍵となります。
まとめ:相性の良い組み合わせとは?
- 避けたい組み合わせ:鉄分が多い赤ワイン × 干物、青魚系の魚介
- 相性の良い組み合わせ:鉄分の少ない白ワイン × 新鮮な白身魚、貝類など
また、レモンなど酸性の調味料やソースを使えば、匂い成分の揮発を抑える効果もあり、マリアージュを助けてくれます。
鉄分含有量の視点で見るおすすめ・注意すべきワインの例
鉄分が比較的多い傾向のある赤ワイン(魚介類と合わせにくい可能性あり)
- シラー(シラーズ):特にオーストラリアのバロッサ・ヴァレー産などは濃厚で鉄分量も高め。
- マルベック:アルゼンチン産は凝縮感があり、鉄分も比較的多い傾向。
- カベルネ・ソーヴィニヨン:ボルドーやカリフォルニアなど、濃密なスタイルではFe²⁺が高め。
- テンプラニーリョ(リオハ):特に熟成タイプは成分が濃縮されやすい。
鉄分が少ない傾向のある白ワイン(魚介類との相性が良好)
- アルバリーニョ(スペインのリアス・バイシャス):鉄分が少なく、酸と塩味のバランスが貝類と相性抜群。
スペイン・リアスバイシャスと近いエリアのポルトガル ミーニョ地方 ヴィーニョ・ヴェルデのアルバリーニョ

ソアリェイロ / アルヴァリーニョ 2023
高温多湿に強いアルバリーニョは日本にも。カーブドッチをはじめとした新潟ワインといえばの品種に。
- 甲州(日本):非常に鉄分が少なく、刺身や天ぷらなど和の魚介料理との好相性で知られる。
これぞ、うまい甲州!
和柑橘や吟醸香感じる甲州!
- ミュスカデ(ロワール):骨格は軽く、ミネラル感があり、牡蠣との定番ペアリング。

ランドロン / ミュスカデ セーブル・エ・メーヌ シュール・リー レ・ウー 2021
- ソーヴィニヨン・ブラン(ニュージーランド/ロワール):フレッシュで酸が際立ち、鉄分も控えめ。
ニュージーランドよりロワールの繊細なソーヴィニョン・ブランの方が魚介類によりマッチ

ユベール・ブロシャール / プイィ・フュメ 2022
- リースリング(ドイツ/アルザス):酸味が豊かで鉄分は少なめ、白身魚や甲殻類とよく合う。
このように、魚介とワインの“相性問題”は、単なる感覚ではなく科学的に理解できる領域へと進んでいます。次に食卓で魚介とワインを楽しむときには、ぜひその背後にある科学を意識してみてください。きっと味わいの世界が広がるはずです。
商品まとめ
ソアリェイロ / アルヴァリーニョ 2023
ポルトガル / ミーニョ地方 / ヴィーニョ・ヴェルデ
¥2,870 (税込)
カーブドッチ / アルバリーニョ ルノー 2023
日本 / 新潟県/山形県
¥4,620 (税込)
ルミエール 光 甲州 2021
日本 / 山梨県
¥3,850 (税込)
Cfa バックヤード・ワイナリー / オープニング・アクト 甲州 2023
日本 / 山梨県 / 甲州市
¥2,530 (税込)
ランドロン / ミュスカデ セーブル・エ・メーヌ シュール・リー レ・ウー 2021
フランス / ロワール地方 / ペイ・ナンテ地区
¥3,470 (税込)
ユベール・ブロシャール / プイィ・フュメ 2022
フランス / ロワール地方 / サントル・ニヴェルネ地区 / サンセール
¥4,260 (税込)
シュロス・ヨハニスベルク / ゲルブラックトロッケン 2020
ドイツ / ラインガウ地方
¥5,410 (税込)