
2025.07.23
関税と円安で揺れる日本のワイン市場:ブルゴーニュとシャンパーニュの未来は?
米国のトランプ大統領は16日、日本との関税交渉をめぐり、25%の関税を8月1日に発動する意向を示唆した。カリフォルニアワインは値上がりし、ブルゴーニュやシャンパーニュの価格も影響を受ける可能性がある。
日本でもワイン価格高騰が進行中
日本はブルゴーニュもシャンパーニュも世界で3番目の輸出市場だが、世界の市場動向と同じく苦戦している。シャンパーニュについては、価格の値上がりが消費者心理にブレーキをかけている。消費のベースとなるノンヴィンテージは、ポル・ロジェ、ルイ・ロデレール、ランソンは9,000円から10,000円に到達している。
円安と不作がさらなる値上げを後押し
値上がりの原因はエネルギー・コストの上昇、経済の不確実性、不安定な地政学要因などがあるが、日本は円安が大きなマイナス要因だ。160円台後半だったユーロが170円台前半で推移すると、心理的な障壁である1万円を突破する。
ブルゴーニュについては、2024年の病害による不作が値上がりにつながる可能性が強い。昨年11月にドメーヌで聞いたところでは、ジョルジュ・ルーミエは2024年のミュジニーの生産を断念した。ドメーヌ・フーリエの収量は40%ダウン。アルマン・ルソーは10hL/haまで落ち込む。ネゴシアンは複数年の在庫を保有しているので、出荷量や価格をある程度調整できるが、人気ドメーヌはそうはいかない。
日本に流入する“行き場を失ったワイン”の可能性
カリフォルニアワインは25%関税が実施されれば値上がりする。一方で、米国はEUの産品に対して30%の関税を課す方針を表明している。これが実現すれば、日本のブルゴーニュやシャンパーニュの価格に影響を与える可能性がある。
シャンパーニュもブルゴーニュも、米国がNo1市場のため、行き場を失ったヨーロッパ産ワインが日本に流入する可能性はある。大手のインポーターは円安の影響を受けて価格の上昇は避けられないが、ディスカウンターで安くなったワインが売られるメリットはあるかもしれない。いずれにせよ、日本市場のブルゴーニュやシャンパーニュが値下がりする可能性は少ない。
レストランや小売における価格上昇の影響
あるインポーター幹部は「関税によって値上がりすれば、低価格のワインはとりわけダメージが大きい。1万円を超す高級なワインは1000円上がったところで影響は大きくないが、2500円のワインが3000円になれば買い控えが進む。街場のレストランでは10万円を超すようなワインの仕入れは停滞し、星付きなど一握りのレストランでしか扱えない」と話す。
日本酒にも波及する輸出への影響
関税は輸入だけでなく、輸出も影響にも影響を及ぼす。代表例が日本酒だ。新潟・長岡市の「朝日酒造」は「久保田萬寿」「久保田千寿」など、70ドルから80ドルのプレミアム・サケを米国に輸出している。総売上9億円のうち40%は輸出が占めている。日本食人気で単価の高い寿司屋や高級日本食レストランで消費されているという。
須佐敏郎・海外事業部長は「コロナ禍で一時的に減ったが、日本食と酒ブームを受けて、プレミアム・サケは毎年10-15%で輸出が伸びてきた。関税で価格が上がると売り上げに影響する」と心配している。
円安と輸送費の高騰がボジョレー離れを加速
メルシャンは先日、ボジョレー・ヌーヴォーの小売店や飲食店での販売から撤退する方針を発表した。円安や輸送コストの高騰が理由だが、それはすべての輸入ワインに共通するネガティブな要因だ。一部の高価格なワインはインバウンドの恩恵を受けているが、トータルでは楽観できない。円安に耐えてきたインポーターも方針転換を迫られる時期にきている。