
2025.07.26
一握りの日本ワインが高騰する理由──希少性、信念、そして“体験”の価値
近年、一部の日本ワインがオークション市場や二次流通で定価の数倍もの価格で取引されている──。その背景には、単なる希少性やブームを超えた「造り手の哲学」と「体験の共有」が存在する。 本稿では、長野県のふたつの注目ワイナリーを取り上げ、この“異常な現象”の核心に迫る。
Kidoワイナリー:抽選販売と転売価格のジレンマ
塩尻・桔梗ヶ原に位置する家族経営のKidoワイナリー。映画『ウスケボーイズ』のモデルにもなった城戸亜紀人氏が2004年に創業した。
現在では抽選販売のみという限定的な販売方式を採っているが、それでもネット市場では定価の7倍以上の価格で取引されることもある。こうした状況に、当主・城戸氏は「このワインは“高く売れるワイン”ではない。満足してもらえる価格に自信を持って決めている」と語る。
彼が目指すのは「濃厚ながら透明感のある白ワイン」、そして「重厚でありながらエレガンスを備えた赤ワイン」。自然な醸造を徹底し、味覚と経験に基づいて収穫と発酵のタイミングを見極めるその姿勢は、世界の銘醸地へのリスペクトを感じさせつつ、桔梗ヶ原のテロワール表現にも一切の妥協がない。
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テールドシエル:現地体験が価値を生む“ナチュール”の旗手
もうひとつの注目ワイナリーが小諸市の「テールドシエル」。元ガス会社役員の池田岳雄氏が還暦を過ぎてから立ち上げ、娘婿の桒原一斗氏が醸造責任者を務める。2023年には2万本を生産したが、95%はナチュラル系の酒販店やレストランで完売。
注目すべきは、消費者との接点を“体験”にシフトしている点。ワインを販売するだけでなく、ボランティアとして収穫に参加することで、消費者自身がワイン造りの一部となる。「自分が収穫したワインが店頭に並ぶ」という経験は、特にミレニアル世代に強く響く。
さらに桒原氏は、野生酵母、無補糖・無補酸、無清澄・無濾過といったナチュラルワインの理念を徹底し、「糠地のテロワール」を余すところなく表現。最新ヴィンテージのテイスティングでは、シャルドネにサヴァニャンを5%ブレンドするなど、酸の美しさと球体的なバランスを追求している。
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高値ワインの本質:単なる「希少性」ではない
ドメーヌ・タカヒコやボー・ペイサージュがパリのオークションで注目されるなか、日本ワインの魅力は単なる「希少性」や「ブーム」では片付けられない段階に来ている。
日本の小規模ワイナリーは、生産量の制約から大量生産の恩恵を受けられず、製造コストも高い。しかしその分、品質に磨きをかけ、個性を極めることができる。結果として、真に価値あるボトルが生まれるのだ。
今後の課題:信頼される二次市場の整備
一方で、買い取り業者や匿名出品による転売市場が増えることで、「真贋不明・状態不良・価格高騰」といった問題も発生している。
現在の日本ワイン市場は、志ある造り手や誠実な流通関係者が目指す“理想”から乖離しつつある。この歪みを正すためには、品質保証と流通の透明性、そして何より「飲み手と造り手がつながる機会」の整備が必要だろう。
真の価値は「造り手の信念」と「体験」に宿る
高額で取引される日本ワイン──だがその裏には、地道な努力と、ワイン造りにかける情熱がある。
それは一過性の投資対象ではなく、“物語”の詰まった一本であることを、私たちは忘れてはならない。これからの時代、日本ワインが世界に誇るべき「文化財」として育っていくかどうかは、我々の選択にかかっているのかもしれない。
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