シュール・リーのワイン|ミュスカデ・シャンパーニュ
シュール・リーのワインについて、手法の基本、ミュスカデとの関係、シャンパーニュでの位置づけ、味わいやペアリングを初心者向けに解説します。
シュール・リーとは
シュール・リー(Sur Lie)は、発酵を終えたワインを澱(トラブルを起こす前の酵母や微粒子を含む沈殿物)と接触させたまま一定期間熟成させる製法です。澱からアミノ酸や核酸、グリセロールなどの成分が徐々に溶け出し、ワインに厚みや旨み、複雑な香りが加わります。シュール・リーのワインは「シュール・リーのワイン」という表現で呼ばれることが多く、白ワインやスパークリングワインで広く用いられます。
発酵と澱との関わり
通常、アルコール発酵後は澱を素早く取り除いて清澄することが多い一方で、シュール・リーでは澱を残して熟成します。澱は時間の経過で崩れ、ワインに溶け込むことで口当たりの丸みや旨み成分を与えます。場合によっては澱引き(澱を取り除く作業)や澱を攪拌するバトナージュを行い、風味の方向性を調整します。こうしたプロセスは人的要素である慣習・知識・継承の一部として各生産者に受け継がれてきました。
ミュスカデとシュール・リー
ミュスカデ(Muscadet)はロワールの白ワインで、主にメロン・ド・ブルゴーニュという白ブドウ品種から造られます。ミュスカデではシュール・リーが歴史的に重要な造り方で、収穫後のワインを澱と共に冬から春まで熟成させることで、爽やかな酸味に程よい厚みが加わる特徴があります。伝統的には春先に瓶詰めされることがあり、その際にわずかな自然な炭酸を感じることがあるのも特徴の一つです。ミュスカデの伝統とテロワール(土地・気候・人的要素の総体)が結びつき、シュール・リーの個性が育まれています。
シャンパーニュとシュール・リー
スパークリングワインの代表的産地であるシャンパーニュでも、基礎となる白ワインや基酒段階で澱と接触させる手法は使われます。ただし「シャンパーニュ」というアペラシオンは、定義された原産地において、その土地特有のテロワールと定められた栽培・醸造規定に基づいて造られたスパークリングワインにのみ使用が認められているため、シュール・リーの扱いも規定や生産者の慣習に従って行われます。瓶内二次発酵を経る製法と組み合わせることで、澱由来の旨みと泡のテクスチャーが一体化した表現が可能になります。
シュール・リーが生む味わいとテクスチャー
シュール・リーはワインの香りと味わいに複数の影響を与えます。典型的には、・旨みやコクの増加、・口当たりの丸み、・トーストやブリオッシュ、ナッツのような副次的な香りの形成が挙げられます。これらは化学反応だけでなく、澱との接触時間や温度、澱を動かすかどうかといった人的要素に依存します。澱との接触はワインの骨格を損なわずに複雑さを与える手段として評価されます。
| 項目 | 特徴 |
|---|---|
| 風味の変化 | パンやビスケットのニュアンス、旨みやコクが増す |
| 口当たり | 丸みが出て厚みが増す |
| 酸味との関係 | 酸味を保ちながら全体の調和が取れる |
| 酒質に与える時間的影響 | 短期間ならフレッシュさ、長期間なら複雑さが増す |
| 適したワインタイプ | 白ワイン、特にミュスカデ系や基酒段階のスパークリングワイン |
使われる白ブドウ品種と生産地の例
シュール・リーは特定の品種に限らず白ブドウ品種全般で用いられますが、地域ごとの伝統やテロワールにより最適な使い方が異なります。代表例としてミュスカデ(メロン・ド・ブルゴーニュ主体)が挙げられます。他にもシャルドネやピノ・グリなどを用いる産地で、澱との接触を活かした造りが見られます。人的要素としての長年の慣習や醸造知識が、どの程度澱と接触させるかを左右します。
料理との合わせ方と楽しみ方
- 同調:シュール・リー由来のトーストやナッツの香りは、同じく香ばしい料理と好相性です
- 補完:酸味があるシュール・リーの白ワインは、脂ののった魚や白身の肉の重さを補完します
- 橋渡し:果実味と澱由来の旨みが、ソースの甘みやクリーム系の料理と橋渡しになります
サービスでは冷やしすぎずフレッシュさと香りを感じられる温度で提供すると、シュール・リーのバランスを楽しみやすくなります。開栓後は時間経過で香りの変化が起きるため、飲み進めながら違いを楽しむのも一興です。
よくある誤解と注意点
シュール・リーは「濁る」や「不衛生」と混同されることがありますが、適切に管理された澱との接触は意図的な醸造手法です。また、澱の影響は時間とともに変化するため、同じラベルでもヴィンテージや熟成期間で表情が異なります。スパークリングワインで澱を残す場合は、各地域の法的規定や製造方法に従う必要がある点に注意してください。
まとめ
- シュール・リーのワインは澱と接触させて熟成する手法で、旨みとテクスチャーが増す
- ミュスカデはシュール・リーの代表的な産地で、爽やかな酸味に厚みを加える役割がある
- シャンパーニュではアペラシオンの規定を守りつつ、澱由来の旨みを泡と組み合わせた表現が可能
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