バトナージュの頻度と期間|ワインへの影響を解説
バトナージュの頻度と期間がワインの質感や香りに与える影響を、目的別の目安と注意点を交えて分かりやすく解説します。
バトナージュとは
バトナージュは、発酵後や熟成中の澱(酵母や微粒物)を棒などでかき混ぜて再懸濁させる作業です。シュール・リー(Sur Lie)は澱と接触させたまま熟成する方法で、澱から旨み成分が溶け出すことで厚みや複雑味が増します。バトナージュはこの効果を積極的に引き出す技術であり、風味やテクスチャーを調整する重要な手段です。
頻度と期間がワインに与える主な影響
テクスチャーとボディへの影響
頻繁なバトナージュは澱から溶出するタンパク質や多糖類を均一に分散させ、口当たりに厚みや丸みをもたらします。反対に頻度を抑えると、より繊細で立体感のある酸と果実味が残りやすくなります。樽熟成とステンレスタンクでは効果の出方が異なるため、容器も判断材料になります。
香りへの影響
バトナージュにより香りの広がりや複雑性が増すことがあります。澱由来のトーストやブリオッシュに近いニュアンスが出る場合もあります。一方で、過度に行うと還元香(閉じた香り)が発生しやすくなるため、酸素の管理と頻度のバランスが重要です。
安定性と微生物への影響
バトナージュはMLF(マロラクティック発酵)との関係や微生物動態にも影響します。例えばMLF前後でのバトナージュは酸の感覚や口当たりに違いをもたらします。衛生管理を怠ると望まない微生物が活性化するリスクがあるため、実施頻度と期間は清潔な設備と組み合わせる必要があります。
状況別の目安(頻度と期間の実務ガイド)
| 頻度 | 期間の目安 | 期待される効果と注意点 |
|---|---|---|
| 毎日〜数回/週 | 数週間〜1か月程度 | 短期間で厚みと丸みを得やすい。果実味を覆いすぎないよう注意。酸の鮮度を損ないやすい場合あり。 |
| 週1回程度 | 1〜3か月 | バランスが取りやすい。香りの複雑性と口当たりの向上を両立しやすい。容器と品種で調整を。 |
| 隔週〜月1回 | 3か月以上 | 繊細さや酸の明瞭さを残す方向。長期シュール・リーのスタイルに向く。還元管理が重要。 |
| ほぼ行わない(ノーバトナージュ) | 短期〜長期まで可 | 澱の効果を最小限にしてテロワールや果実味を前面に出す。自然な表現を重視する場合に選択。 |
実務的な判断基準と調整ポイント
- ブドウ品種:白ブドウ品種やオレンジワインなど、皮や澱の影響が出やすい品種は頻度を調整する。
- 熟度と収穫時の状態:未熟果では雑味が出やすいので慎重に。完熟果は旨味を引き出しやすい。
- 容器:樽は酸素移行があり繊細さが変わる。ステンレスは酸化リスクが低く複数回のバトナージュに向く。
- 発酵段階:MLFの前後、酵母の活性状況で効果が変わる。MLFを予定する場合はタイミングを合わせる。
- 衛生と酸素管理:還元香や望まない微生物のリスクを避けるために清潔な環境と適切な酸素管理が必要。
シャンパーニュなどスパークリングでの扱い
シャンパーニュ(アペラシオン)では、法的に定められた規定と土地特有のテロワール表現が重視されます。瓶内二次発酵を行うワインでは、澱との接触が泡の質や熟成の表情に影響しますが、アペラシオン規定や製法上の工程を踏まえた処理が求められます。目的と規格を両立させる判断が重要です。
まとめ
- 目指すスタイルで頻度と期間を決める:厚みを出すなら頻度高め・短期、繊細さを残したいなら頻度低め・長期。
- 原料と容器に応じて調整する:品種、熟度、樽かステンレスかで最適な間隔と期間が変わる。
- 衛生と酸素管理を徹底する:還元香や望まない微生物のリスクを避けるため、適切な環境管理が不可欠。
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