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アントシアニンとは|赤ワインの色素成分

アントシアニンとは|赤ワインの色素成分

アントシアニンは黒ブドウ品種に含まれる主要な色素で、pHや共存物質により色調が変化します。醸造・熟成工程やテロワールが色と安定性に影響する仕組みをわかりやすく解説します。

アントシアニンとは

アントシアニンはフラボノイドに分類される水溶性の色素で、黒ブドウ品種の果皮に多く含まれます。単一の「物質」ではなく、糖が結合した複数の誘導体(グリコシド)が存在し、品種や熟度で組成が変わります。ピノ・ノワールやカベルネ・ソーヴィニヨンなど、黒ブドウ品種ごとに含量や構成比に差があり、ワインの色や色持ちに影響します。

化学的性質と色の変化

色を左右する分子の形態

アントシアニンは溶液のpHや周囲の分子環境で構造が変わり、赤〜紫〜青と色調が変化します。酸性条件下では赤みを帯びた形態が優勢になり、pHが上がると紫や青に傾きます。さらに、金属イオンや他のフェノール類との配位や共有結合によって色が安定化・変化します。これらの変化はワインの見た目に直結しますが、味わいの説明では「色の成り立ち」として扱うのが適切です。

共鳴(コピグメンテーション)と色の濃さ

コピグメンテーションとは、アントシアニンが隣接するフェノールや非色素分子と非共有結合で結びつき、色を濃く鮮やかに見せる現象です。若いワインではこの作用が色の鮮明さに寄与します。一方、熟成が進むとアントシアニン同士やタンニンと縮合して新たな着色性物質ができ、色調は紫よりレンガ色へと移行します。

醸造と熟成におけるアントシアニンの扱い

抽出(マセラシオン)の影響

アントシアニンは水溶性のため、醸造中のマセラシオン(果皮と果汁の接触)や温度、アルコールの上昇が抽出量に直結します。長時間のマセラシオンや温度管理で色は濃くなりますが、同時に苦味や渋み(タンニン)も抽出されやすくなります。醸造者は果実の熟度と目的のスタイルを考え、最適な抽出を設計します。

熟成による変化と安定化

熟成中、アントシアニンは他のフェノールと縮合を起こし、色素が安定化します。これにより若い頃の鮮やかな紫色から、経年で透明感のあるレンガ色や茶褐色へと移行します。樽熟成では酸素の微量な作用が促進要因となり、色と風味の両方に影響します。渋みについては「渋みが和らぐ」「収斂感が穏やかになる」と表現するのが適切です。

テロワールとアントシアニン

アントシアニンの含有量や構成はテロワールの影響を受けます。ここでのテロワールは土地・気候・人的要素の総体を指し、土壌や日照、収穫時の慣習・知識・継承などが含まれます。クリマやミクロクリマの違いは果実の熟度や酸度に差を生み、その結果として抽出される色素の性質も変わります。アペラシオンの規定や栽培慣行も最終的な色に影響します。

  • 土壌:排水性や保水性が果実の成熟に影響し、アントシアニン合成に寄与する
  • 気候:日照と温度が色素の生成量と組成に関わる
  • 人的要素:収穫のタイミングや収穫方法、醸造上の慣習・知識・継承が抽出に影響する

分析・品質管理の観点

ワイナリーでは比色法やHPLCなどでアントシアニンのプロファイルを把握し、醸造の指針にします。色の安定性評価や吸光度の測定はブレンドや熟成方針の重要な判断材料です。商業的に表示できる数値や統計を示す場合は、必ず出典を明記することが求められます。

テイスティングとペアリングの視点

色はワインの熟成度や構成成分の手がかりになります。若いうちは鮮やかなルビーや紫が見られ、熟成が進むとレンガ色や茶色が増えます。料理との組み合わせでは、酸味やタンニンの性格が重要です。ペアリング表現は同調・補完・橋渡しのフレームで説明すると伝わりやすく、例えばタンニンのあるワインは脂のある料理と補完し、果実味のあるワインはフルーツソースと橋渡しになります。

形態色の特徴と説明
フラビリウムイオン(酸性形)赤みが強く、若いワインで目にする色の主要因
キノイド塩基(中性〜ややアルカリ寄り)紫や青みを帯びる形態でpHに敏感
ヘミケタール・チャルコン(無色)環境によって無色化し、見た目の色調を変える要因
コピグメンテーション・配位体他の分子と複合して色を濃く安定化する

まとめ

  • アントシアニンは黒ブドウ品種由来の主要な色素で、pHや他成分との相互作用で色調が変わる
  • 醸造・熟成・テロワール(土地・気候・人的要素の総体)が色の量と安定性を左右する
  • テイスティングでは色から熟成度や醸造処理の手がかりが得られ、ペアリングは同調・補完・橋渡しの視点で考える

用語メモ:テロワール=土地・気候・人的要素の総体。人的要素には慣習・知識・継承が含まれます。クリマは自然条件と歴史的利用が結びついた区画、ミクロクリマは畑レベルの局所的な気候条件、アペラシオンは法的に保護・規定する原産地呼称制度、リュー・ディは品質区分を伴わない歴史的な畑名です。

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