ヴァン・ナチュールとは|自然派ワインの定義
ヴァン・ナチュール(自然派ワイン)の定義と基本的な特徴を、畑と醸造の視点からわかりやすく解説します。テロワールや関連用語も整理しています。
ヴァン・ナチュールとは
ヴァン・ナチュール(自然派ワイン)は一つの厳密な法的定義があるわけではありませんが、概ね畑と醸造での「低介入」を重視するワインを指します。畑では有機栽培やビオディナミ、草生やしや選択的な剪定など、化学合成農薬や過剰な外的介入を避ける手法が用いられます。醸造では野生酵母(天然酵母)での発酵、添加物の最小化、澱引きや濾過の制限、亜硫酸塩(SO2)の無添加または極少量使用などを採る生産者が多く見られます。
特徴と栽培・醸造の考え方
畑での特徴
ヴァン・ナチュールの多くの生産者は土壌と植生を重視します。化学合成農薬や合成肥料を避け、剪定や収穫のタイミングに工夫を凝らすことで、ブドウ本来の状態を保とうとします。ここでの「人的要素」は、慣習・知識・継承を含む人の営みを指し、世代を越えた栽培法や経験が評価されます。
醸造での特徴
醸造では可能な限り外的な加工を避けることが基本にあります。野生酵母発酵や自然な澱との接触を活かす手法が採られますが、技法や結果は生産者によって幅があります。亜硫酸塩の扱いも生産者ごとに差があり、完全に使用しない場合もあれば、微量を補助的に用いる場合もあります。
テロワールとヴァン・ナチュールの関係
ヴァン・ナチュールはしばしばテロワールの表現を重視します。テロワールとは土地・気候・人的要素の総体であり、土壌やミクロクリマ(畑レベルの局所的な気候条件)、クリマ(自然条件と歴史的利用が結びついた最小単位のテロワール区画)などが味わいに作用します。人的要素には慣習・知識・継承が含まれ、地域に根ざした栽培や醸造の技がワインの個性に反映されます。
法律・ラベルとアペラシオン
ヴァン・ナチュールは概念であり、各国の法規やアペラシオン(アペラシオンは法的に保護・規定する原産地呼称制度)とは別の次元にあります。AOCやAOPなどの制度内で自然派的な栽培や醸造を行う生産者もいる一方、あえてアペラシオン表示を用いずに独自ラベルで出荷する例もあります。
「シャンパーニュ」というアペラシオンは、定義された原産地において、その土地特有のテロワールと、定められた栽培・醸造規定に基づいて造られたスパークリングワインにのみ使用が認められています。
よくある誤解
- 誤解:ヴァン・ナチュールは必ず無添加である → 正:無添加を目指す生産者は多いが、実際の運用は生産者ごとに異なる。
- 誤解:品質が安定しない → 正:醸造法の違いで個性が出やすいが、技術と経験により安定した高品質の生産者も存在する。
- 誤解:すべてがオーガニック認証を持つ → 正:認証を取得する生産者もいるが、認証の有無は生産者の選択に依存する。
関連用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| テロワール | 土地・気候・人的要素の総体。ワインの味わいに影響する土地の個性を指す。 |
| 人的要素 | 慣習・知識・継承を含む人の営み。栽培・醸造の伝統や技術を含む。 |
| クリマ | 自然条件と歴史的利用が結びついた最小単位のテロワール区画(ブルゴーニュでの用語)。 |
| ミクロクリマ | 畑レベルの局所的な気候条件。日照や風向き、排水性などが含まれる。 |
| アペラシオン | 法的に保護・規定する原産地呼称制度。産地名や生産規定を定める。 |
| リュー・ディ | 歴史的に使われてきた畑や土地の固有名。品質区分を伴わない地名。 |
まとめ
ヴァン・ナチュールはブドウと土地の個性を尊重し、介入を抑える姿勢を持つワインの総称です。スタイルや方針は生産者ごとに幅があり、テロワールや人的要素の違いが味わいに直結します。吟味して選ぶことで、産地や生産者の個性をより楽しめます。
- ヴァン・ナチュールは畑と醸造での低介入を重視し、ブドウとテロワールの表現を目指す。
- テロワールは土地・気候・人的要素の総体であり、クリマやミクロクリマ、リュー・ディなどの概念が関係する。
- アペラシオンの規定とヴァン・ナチュールの実践は共存する場合もあり、表示や認証は生産者ごとに異なる。