ピジャージュとは|赤ワインの色と渋みを引き出す作業
ピジャージュは赤ワイン醸造で行う、果皮を醪に押し沈めて色やタンニンを引き出す作業です。目的や方法、注意点を初心者向けに解説します。
ピジャージュとは
ピジャージュは、赤ワイン醸造で使われる用語です。果皮や種子が表面に浮いてできる帽(キャップ)を、桶やタンクの上から突き下げて醪に戻す作業を指します。初出時に用語を補足すると、醪とは発酵中の果汁と果皮等が混ざった状態を意味します。ピジャージュにより、色素(アントシアニン)やタンニンが果汁へ溶け出し、ワインの色と渋みの基礎が形成されます。
なぜピジャージュを行うのか
主な目的は次の3点です。まず色の抽出です。赤ワインの色は主にアントシアニンという色素によるため、果皮との接触を維持・促進することで望む色調を得ます。次にタンニンの抽出です。タンニンは渋みや収斂感を生み、ワインの骨格や保存性に関わります。最後に香りや構造の抽出で、果皮由来の香り成分や口当たりの厚みを引き出します。
ピジャージュがワインに与える影響
ピジャージュの頻度や強さによって、抽出される成分量が変わります。適切に行えば色は濃く、タンニンは骨格を与える程度に抽出されます。一方で過度な突き下げは過抽出を招き、渋みが強くなりすぎる可能性があります。ここで重要なのは『適切なバランス』で、品種や果実の熟度、醸造で目指すスタイルに応じて調整します。
主な方法と比較
| 方法 | 特徴 | 効果 | 適するスタイル |
|---|---|---|---|
| ピジャージュ(突き下げ) | 手や道具でキャップを押し沈める。比較的優しく、局所的に作用する。 | 色とタンニンを安定的に抽出。果皮との接触を均一化する。 | 繊細な品種や中〜長期発酵の赤ワイン |
| パンプオーバー(ポンピングオーバー) | タンク上部から果汁を汲み上げて上から注ぐ機械的手法。 | 強い抽出が可能で発色を早める。 | 力強いボディを求めるワイン |
| 足踏み(フットスタンピング) | 人の足で果実を踏んで破砕する伝統的手法。接触が自然。 | 穏やかな抽出と繊細な風味。果皮を壊すことで早めの抽出も可能。 | 伝統的・少量生産の赤ワイン |
実際の手順とタイミング
発酵初期の扱い
発酵開始直後はアルコールがまだ低めで、色素やタンニンの抽出が進みやすい時期です。品種や果実の熟度によっては初期にやや穏やかなピジャージュを行い、発色を促す場合があります。温度管理や酵母の状態も考慮し、発酵が暴走しないよう注意します。
頻度と力加減の目安
一般的には一日に数回から数回程度の突き下げを行いますが、目安は果実の状態と目指すワイン像で変わります。力加減は穏やかに行い、キャップを均一に湿らせることが重要です。過度な力は過抽出の原因になりやすいので、試験的に少量で感触を確認してから本格的に行うとよいでしょう。
注意点とよくある問題
- 過抽出に注意する:タンニンが強く出すぎると渋みが前面に出ることがある。
- 酸化リスクを管理する:頻繁な操作で酸素を取り込みすぎないようにする。
- 衛生管理を徹底する:機器や手の不潔は雑菌による異臭や劣化の原因になる。
- 品種と熟度を考慮する:未熟果ではピラジンなどの影響で不快な香りが出る場合がある。
ピジャージュと関連する用語
- マセラシオン(浸漬): 果皮と果汁を接触させる工程全体。色やタンニンの抽出に関わる。
- アントシアニン: 赤ワインの色素。果皮由来でアルコールや酸に溶けやすい。
- タンニン: 果実や種子由来の渋み成分で、ワインの骨格や保存性に寄与する。
- マロラクティック発酵(MLF): リンゴ酸が乳酸に変わり酸味が穏やかになる工程。ピジャージュとは別工程だが全体のバランスに影響する。
まとめ
- ピジャージュは赤ワインの色とタンニンを引き出す重要な作業で、頻度と力加減で抽出量が変わる。
- 品種や果実の熟度、目指すワインスタイルに合わせて方法を選び、過度な抽出や酸化を避ける。
- 衛生と観察(香り・色・発酵経過)を重視し、小さな調整を積み重ねることが品質向上につながる。
補足: 用語の表記は記事内ルールに従っています。例えばピジャージュの目的や操作は、赤ワインの醸造工程全体の一部であり、クリマやアペラシオン等の産地要素とは別の技術的側面です。