コールドソークとは|低温浸漬で色素を抽出する技法
コールドソークは発酵前の低温浸漬で色素や香りを穏やかに抽出する技法です。効果、手順、適した品種と注意点を初心者にも分かりやすく解説します。
コールドソークとは
コールドソーク(cold soak)は、発酵前の低温浸漬を指す用語です。果汁と果皮を低めの温度で数時間から数日間接触させることで、アルコールが生成される前に水溶性の色素や香り成分を抽出します。英語圏ではcold soakやcold macerationなどとも呼ばれますが、ここでは「コールドソーク」と表記します。専門用語は初出時に簡潔に説明し、読みやすさを優先しています。
目的と期待できる効果
色素と香りの抽出を穏やかに行う
コールドソークの主な目的は、メラノマー(色素)や水溶性の芳香成分をアルコール抽出より先に引き出すことです。低温下ではタンニンの抽出が抑えられ、色調は安定しやすくなります。その結果、果実味を活かしたやわらかな表情や、香りの明瞭さを得やすくなります。表現としては「渋みが和らぐ」「果実味が際立つ」といった効果が期待されます。
ワインスタイルへの影響
コールドソークは軽快でフルーティなスタイルから、繊細な熟成ポテンシャルを残したミディアムボディの黒ブドウ品種に向きます。樽熟成と組み合わせると、果実の輪郭と樽香が調和しやすくなります。ただし強い色調や厚みを求めるスタイルでは、浸漬時間や温度を調整する必要があります。
実際の手順と管理ポイント
基本的な工程
- 収穫したブドウを仕込み槽に入れる(破砕は可否で判断)
- 温度を低めに設定する(例: 冷却設備で5〜15℃程度に管理)
- 果皮と果汁を接触させたまま所定時間(数時間〜数日)保持する
- 必要に応じてポンピングオーバーやパンチダウンは低頻度にとどめる
- 所定時間経過後、通常の発酵管理に移行する(酵母添加や自然酵母に任せる等)
温度や時間はワイナリーの設備や目指すスタイルで決まります。低温は抽出を穏やかにし、長時間の浸漬は香りを豊かにしますが、微生物管理や酸化リスクを十分に考慮する必要があります。
衛生管理と微生物リスク
発酵前の低温浸漬は酵母や乳酸菌の活動が抑制されますが、同時に雑菌の繁殖リスクも存在します。SO2(亜硫酸)の適切な使用、冷却設備の安定、衛生的な設備管理が重要です。また、長時間の浸漬では酸化を招くため、酸素管理や還元的な取り扱いも検討してください。
適した品種と向かないケース
コールドソークはピノ・ノワールのように繊細な香りを持つ黒ブドウ品種や、果実味を前面に出したい場合に有効です。カベルネ・ソーヴィニヨンやシラー/シラーズのように強いタンニンや深い色調を特徴とする品種でも、浸漬時間を短く調整すれば色の出方をコントロールできます。一方で、非常に酸化しやすい果汁や極端に高温な収穫条件の果実には注意が必要です。
コールドソークと関連用語
- マセラシオン(浸漬): 発酵前後を含む果皮と果汁の接触全般を指す用語
- マロラクティック発酵(MLF): リンゴ酸が乳酸に変わり酸味が穏やかになる工程
- シュール・リー: 澱と接触させる熟成法。コールドソークとは工程と目的が異なる
| 項目 | コールドソーク | 通常のマセラシオン(発酵中) |
|---|---|---|
| 主目的 | 低温で色素・香りを穏やかに抽出 | アルコールで強く色素・タンニンを抽出 |
| 温度帯 | 低温(5〜15℃程度で管理) | 発酵温度(発酵中の上昇に依存) |
| 抽出の特徴 | タンニンが抑えられ果実味が明瞭 | 色調やタンニンが強く出やすい |
| リスク管理 | 微生物・酸化管理が重要 | 発酵の熱で微生物リスクは低下 |
注意すべき点と現場での工夫
実務では、収穫時の果実の健康状態、SO2管理、冷却能力の有無が成功の鍵になります。人的要素としての慣習・知識・継承(ワイナリー固有のやり方)も重要で、同じ手法でも畑や気候、設備に合わせた調整が必要です。小規模な生産者は短時間のコールドソークから試すとリスクを抑えられます。
補足: コールドソークはテロワールやクリマを直接変えるものではありません。あくまでブドウの持つ成分をどのように引き出すかを制御する醸造技法です。
まとめ
- 色と香りを穏やかに抽出する低温浸漬技法で、果実味を際立たせ渋みの出方をコントロールできる。
- 温度・時間・衛生管理が重要で、SO2や冷却設備、人的要素(慣習・知識・継承)による調整が必要である。
- ピノ・ノワールなど繊細な黒ブドウ品種に適し、目的に応じて通常のマセラシオンと使い分ける。