マセラシオンとは|皮や種から成分を抽出する工程

マセラシオンとは|皮や種から成分を抽出する工程

マセラシオンはブドウの皮や種と果汁を接触させ成分を抽出する工程です。色やタンニン、香りを左右し、ワインタイプごとに手法が異なります。

マセラシオンとは

マセラシオンはフランス語で「浸漬」を意味し、醸造では破砕したブドウの皮や種と果汁を一定時間接触させる工程を指します。皮や種にはアントシアニン(色素)、タンニン(収斂感のもと)、香りの前駆体が含まれており、これらを果汁へ移すことでワインの色調や構造を作ります。

基本原理と関連する発酵

発酵とマロラクティック発酵(MLF)の位置づけ

発酵は酵母が糖をアルコールと二酸化炭素に分解する過程です。赤ワインでは発酵とマセラシオンが同時に進み、皮からの成分がアルコールとともに溶け出しやすくなります。マロラクティック発酵(MLF)は乳酸菌によりリンゴ酸が乳酸に変換される過程で、酸味が穏やかになり口当たりがまろやかになります。

工程と目的

抽出される主な成分と効果

マセラシオンで主に抽出されるのは色素(アントシアニン)、タンニン、フェノール類、香りの前駆体です。これらによりワインは色調、骨格、余韻の長さ、香りの複雑さを獲得します。抽出が強すぎると渋みや苦味が目立つため、時間や温度の管理が重要です。

主要な操作と管理項目

  • 接触時間:数時間〜数週間。長時間はタンニンや色素の抽出が進む。
  • 温度:高温ほど抽出が進みやすい。赤ワインでは発酵温度を調整して色とタンニンのバランスを取る。
  • ピジャージュ/パンチダウン(かき混ぜ):果帽(スキンズの層)と果汁の接触を促す。
  • ポンピングオーバー(上から送液):均一な抽出と酸素供給を目的とする。
  • 圧搾タイミング:発酵途中で行うか、発酵終了後に行うかで風味が変わる。

ワインタイプ別のマセラシオン活用

以下の6タイプそれぞれでマセラシオンの目的や手法が異なります。

  • 赤ワイン:皮と種を長時間接触させ、色とタンニンを主体的に抽出する。発酵中の温度管理で抽出の度合いをコントロールする。
  • 白ワイン:通常は果汁のみを発酵するためマセラシオンは短時間か行わない。例外として香り成分を抽出するための短時間接触が行われることがある。
  • ロゼワイン:黒ブドウを短時間だけ接触させ淡い色を得る。接触時間がロゼの色調を決める重要な要素。
  • スパークリングワイン:通常は圧搾した果汁で造るためマセラシオンは限定的。ただし原料ワインのスタイル作りで短時間の接触が用いられることがある。
  • 酒精強化ワイン:マセラシオンはスタイルに応じて使われる。シェリーやポートでは色や風味の濃度を高める目的で使用される場合がある。
  • オレンジワイン:白ブドウを皮ごと発酵させることで皮から色素やタンニンを抽出する。ジョージアの伝統的なクヴェヴリ製法など、古来の手法と関わりが深い。

主なマセラシオン手法

  • 伝統的浸漬:破砕した果実をタンクに入れて自然に抽出する。発酵中は果帽管理を行う。
  • コールドマセラシオン(低温浸漬):発酵前に低温で香り成分を抽出する手法。色や香りを引き出しつつタンニン過剰を避ける。
  • カーボニック・マセラシオン(マセラシオン・カルボニック):房ごと密閉して炭酸ガスの中で醗酵させ、フルーティで柔らかなタンニンを得る。ボジョレーヌーヴォー等で用いられることがある。
  • 長期皮接触(オレンジワイン等):白ブドウを皮ごと数日〜数か月接触させ、複雑でしっかりした構造を作る。

工程設計が味わいに与える影響

接触時間や温度、攪拌頻度の選択は味わいのバランスに直結します。例えば短時間のマセラシオンは鮮やかな色と軽やかなタンニンを与え、長時間は深い色合いとしっかりした収斂感をもたらします。樽熟成やMLFと組み合わせることで、まろやかさや熟成ポテンシャルが生まれます。

マセラシオンのタイプ主な効果向くワインタイプ
短時間接触淡い色、軽やかなタンニン、フレッシュ感ロゼワイン、軽めの赤ワイン
長時間接触濃い色、しっかりしたタンニン、熟成適性フルボディの赤ワイン、オレンジワイン
コールドマセラシオン香り成分の抽出を促進、過剰なタンニンを避ける高品質赤ワイン、香り重視のワイン

歴史的背景と参考情報

ワインの起源は約8,000年前に遡るとされ、ジョージアでの考古学的調査がその証拠として知られます(出典: 約8,000年前、ジョージア(考古学的調査))。また、近代ワイン史では1976年のパリスの審判が転機となり、1976年、スティーブン・スパリュア主催のブラインドテイスティングにより新世界ワインが注目されました(出典: 1976年、スティーブン・スパリュア主催)。

品種の起源や系譜はDNA解析で明らかにされてきました。例えばUCデービスのキャロル・メレディス博士らの研究など、研究機関による遺伝学的解析が品種の親子関係や系統を特定するうえで重要な役割を果たしています(出典: UCデービス キャロル・メレディスらの研究)。

実践的なチェックリスト

  • 目指すスタイルを明確にする(フレッシュ、フルボディ、オレンジなど)。
  • 試験ロットで接触時間と温度を変えて比較する。
  • 抽出過剰のリスクを避けるために、適宜香りと渋みを評価する。
  • 発酵管理とMLFのタイミングを設計し、熟成計画と整合させる。

まとめ

  • マセラシオンは皮や種から色素・タンニン・香りを抽出し、ワインの色調と構造を作る重要工程である。
  • 接触時間・温度・攪拌の管理により、軽やかさから重厚さまで幅広いスタイルを設計できる。発酵(酵母が糖をアルコールと二酸化炭素に分解)やMLF(乳酸菌によりリンゴ酸が乳酸に変換)との連携が味わいを左右する。
  • ワインタイプごとに適切なマセラシオン手法を選び、試験と評価を重ねることが良い結果につながる。

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