澱引きとは|ワインを澄ませる工程を解説
澱引きは発酵後や熟成中に生じる澱(おり)を移し替えてワインを澄ませる工程です。目的・方法・タイミングを初心者向けに分かりやすく解説します。
澱引きとは
澱引きは、フランス語で「soutirage(スートラージュ)」とも呼ばれます。澱(おり)は主に発酵で死んだ酵母や果皮の微細片、タンニンの沈殿などで構成されます。澱を定期的に移し替えることでワインを澄ませ、雑味や過度な還元(硫黄系の匂い)の発生を抑えることができます。一方で、意図的に澱と接触させるシュール・リーの手法は旨みや構成を豊かにするため、必ず除去するわけではありません。
澱の種類と見分け方
主な澱は粗澱(大きな果皮片や茎の破片)と微細澱(酵母の死骸やタンニンの沈殿)に分かれます。色や匂い、沈降速度で判別できます。白ワインやオレンジワインでは澱が色味に影響するため、特に注意深く管理します。澱の香りが過度に硫黄や腐敗臭を帯びる場合は早めの処置が必要です。
澱引きの目的
- ワインを澄ませて見た目を良くする
- 不要な成分が長期熟成中に悪影響を与えるのを減らす(酸化や還元の管理)
- 香味のバランスを調整する:澱を残すことで旨みや厚みを引き出す場合もある(シュール・リー)
澱引きの主な方法
重力による澱引き(自然澱引き)
もっとも古典的な方法は重力を利用して澱を沈め、上澄みだけを別の容器へ静かに移す方法です。小規模ワイナリーや伝統的な醸造でよく用いられます。移し替えはゆっくり行い、ポンプの使用時よりも酸素の取り込みを抑えられる利点があります。
ポンプを使った澱引き
大規模設備ではポンプを用いて移送します。速やかに大量のワインを移せる反面、酸素が入りやすいため酸化対策(窒素ブローや低酸素下での作業)が重要です。
清澄(フィニング)と濾過
清澄は卵白、ベントナイトなどの清澄剤で粒子を凝集させて沈降を促す手法です。濾過は物理的に微粒子を取り除きます。これらは澱引きと組み合わせて使われますが、過度な濾過は香りやテクスチャーを損なうおそれがあるため、目的に応じた選択が必要です。
ワインタイプ別の考え方
| ワインタイプ | 澱引きのポイント |
|---|---|
| 赤ワイン | タンニン由来の澱が出やすく、除去でクリアな色調と安定を図る。長期熟成では慎重に行う。 |
| 白ワイン | 色味維持と清澄が重要。シュール・リーで旨みを出す選択もある。 |
| ロゼワイン | 短い皮接触で色を決めるため、澱管理で鮮やかさを保つ。 |
| スパークリングワイン | 瓶内二次発酵後の澱を除去するためのデゴルジュマンなど専用工程が必要。 |
| 酒精強化ワイン | 加糖や酒精添加があるため澱管理は目的に応じて柔軟に行う。 |
| オレンジワイン | 白ブドウの皮と接触させる造りのため澱が多く残る。澱引きのタイミングで色やタンニンのバランスが変わる。 |
タイミングと実務上の注意
- 発酵直後:粗い澱を取り除いて発酵由来の不純物を減らす
- 熟成途中:定期的に澱引きして安定化を図るが、旨味を残したい場合は間隔を空ける
- 瓶詰め前:澱を十分に取り除き、澱の混入を防ぐ
注意点としては衛生管理と酸素管理です。過度な酸素の混入は酸化を進めますが、全く酸素を与えないと還元臭が発生することがあります。目的に応じて窒素や二酸化炭素でのブロー、温度管理、清潔な器具の使用が重要です。
科学的背景と関連用語
発酵とは、酵母が糖をアルコールと二酸化炭素に分解する過程です。これがワインのアルコール生成の基本です。マロラクティック発酵(MLF)は、乳酸菌によりリンゴ酸が乳酸に変換される過程で、酸味が穏やかになり口当たりがまろやかになります。シュール・リーは、発酵後の澱とワインを接触させたまま熟成させる製法で、澱から旨み成分が溶け出し厚みと複雑さが生まれます。これらのプロセスを理解すると、澱引きの目的やタイミングを合理的に決めやすくなります。
歴史的背景と出典
ワインの起源は約8,000年前にジョージアでの考古学的調査が示しています(出典:考古学的発見、ジョージア地域のクヴェヴリ遺跡)。1976年のパリスの審判はスティーブン・スパリュア主催のブラインドテイスティングで、新世界ワインが注目される契機となりました(出典:1976年パリスの審判記録、主催:スティーブン・スパリュア)。DNA解析に関する研究では、カリフォルニア大学デービス校(UC Davis)のCarole Meredith博士らの研究が品種系統の解明に寄与しています(出典:UC Davis、Carole Meredithらの品種研究)。
よくある疑問と簡潔な答え
Q. 澱はすべて取り除くべきですか? A. 目的次第です。清澄して透明感を求める場合は除去しますが、シュール・リーのように旨みを出すために澱と接触させる場合もあります。 Q. 家庭でできる澱引きは? A. 小規模なら静置して上澄みを慎重に移す方法が現実的です。衛生と酸素管理に注意してください。
まとめ
- 澱引きはワインの澄みや安定性を高める重要工程で、目的に応じて除去または残す判断が必要です。
- タイミング・方法・酸素管理を適切に選ぶことで酸化や還元のリスクを低減できます。
- シュール・リーのように澱と接触させる選択肢もあり、風味の厚みを意図的に作ることができる。
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