濾過と清澄|ワインを透明にする技術
ワインを透明にする「濾過」と「清澄」の目的と代表的な技術、工程での使い分けを初心者向けに解説します。各ワインタイプ別の配慮点や歴史・科学的背景も紹介。
濾過と清澄とは
清澄とは、ワイン中の微粒子やタンパク質、ポリフェノールなどを凝集剤により結び付けて沈降させ、上澄みを取る工程です。代表的な凝集剤にはベントナイト(タンパク質除去に有効)や卵白(赤ワインのタンニン調整に用いられる)があります。一方、濾過は物理的に液体を通すことで微粒子を除去する工程で、粗濾過から精密濾過まで段階的に行われます。目的は見た目の透明化、瓶内安定性、微生物リスクの低減です。
主な清澄・濾過技術
- ベントナイト清澄:タンパク質を吸着して沈降させる。白ワインの曇り防止に有効。
- 卵白清澄:赤ワインの過剰なタンニンを穏やかに整えるために使われる。
- 粗濾過(プレフィルトレーション):大きな粒子を除去し、次工程の負荷を下げる。
- 精密濾過(フィルターカートリッジ、膜濾過):微生物や澱を取り除き、瓶詰め前の仕上げに用いる。
- 遠心分離:大量処理で澱を短時間で分離できる。風味変化を最小限に抑える設計が必要。
- 膜技術(逆浸透を含む場合もある):選択的に成分を除去できるが、取扱いに注意が必要。
工程での使い分けと注意点
清澄は発酵後や熟成中に行い、まずは過剰な澱や不安定なタンパク質を取り除く目的で使います。濾過は瓶詰め直前に行うことが多く、瓶内発酵や再発酵のリスクを下げます。ただし過度な濾過は香りや口当たりの繊細な成分を取り除くことがあるため、目的(外観安定か微生物安定か)に応じて程度を決めます。熟成を前提とするワインでは、軽めの処理で風味を残す選択が採られます。
ワインタイプ別の配慮
- 赤ワイン:色素やタンニンを過度に失わないよう、清澄剤や濾過強度を抑える場合がある。
- 白ワイン:タンパク質の曇りを防ぐためベントナイト清澄が多用される。
- ロゼワイン:色調が重要なため、色素保持を意識した処理が必要。
- スパークリングワイン:瓶内二次発酵やガス保持があるため、微生物管理を重視。過度な濾過は泡質に影響することがある。
- 酒精強化ワイン:高アルコールのため微生物リスクは低いが、澱や香味のクリアさを整える。
- オレンジワイン:果皮接触で豊富な微粒子やタンニンがあるため、清澄の選択で風味の個性を守る。
歴史と科学的背景
ワインの起源は約8,000年前、ジョージアでの考古学的調査による発見にさかのぼります(出典: 約8,000年前、ジョージア(考古学的調査))。近代の出来事としては1976年にスティーブン・スパリュアが主催したパリスの審判があり、これにより新世界ワインが国際的に注目されるきっかけとなりました(出典: 1976年、スティーブン・スパリュア主催)。また品種や系統の解明にはDNA解析が重要で、シャルドネの祖先や品種間の関係はUC DavisのCarole Meredithらの研究で示されています(出典: UC Davis、Carole Meredithらの研究)。
科学的なワインの動き(補足)
発酵は酵母が糖をアルコールと二酸化炭素に分解する過程です。二次的に行われるマロラクティック発酵(MLF)は、乳酸菌の働きによりリンゴ酸が乳酸に変換され、酸味が穏やかになり口当たりがまろやかになります。濾過や清澄はこれらの発酵や熟成プロセスとバランスを取りながら、安定性と飲用時の見た目を整える工程です。
代表的な濾過方法の比較表
よくある誤解と実務的アドバイス
- 濾過=風味を完全に失う、は誤解。強度と方法で風味保持は可能。
- 清澄は必ずしも完全な澄みを保証するものではなく、製法や熟成と合わせて設計する必要がある。
- 自然派ワインでも瓶詰めの安定化のために軽い濾過や澱取りを選ぶ生産者は多い。
まとめ
- 目的を明確にすること:外観(透明度)と安定性(微生物・澱)で処理方針を分ける。
- ワインタイプに合わせること:赤・白・ロゼ・スパークリング・酒精強化・オレンジの特性を尊重する。
- 過度を避けること:濾過・清澄は度合いが品質に影響するため、風味保持と安定化の両立を意識する。