クリオエクストラクションとは|低温浸漬法
クリオエクストラクション(低温浸漬法)は、発酵前に低温で果皮と果汁を接触させ、香りや色素を穏やかに抽出する醸造技術です。目的や注意点、実施方法を初心者にもわかりやすく解説します。
クリオエクストラクションとは
クリオエクストラクションは一般に「低温浸漬法(コールドマセレーション)」と呼ばれる工程を指します。発酵を開始する前に果汁と果皮を数日から数週間、低温で接触させることで皮由来の色素(アントシアニン)や香気成分、前駆物質を抽出します。低温により酵母の発酵活動が抑えられるため、香り成分が失われにくく、抽出される成分のバランスが変わりやすいのが特徴です。
目的と期待できる効果
- 香りの強化: フレッシュな果実香や品種特有の香り成分を引き出す。
- 色の安定化: アントシアニンを穏やかに抽出して色調を整える。
- タンニンの抑制: 高温での浸漬に比べて過度なタンニン抽出を避け、収斂感を和らげる。
- 醸造上の選択肢を増やす: ブレンドや発酵管理の自由度が高まる。
実施方法と管理ポイント
実際の工程は設備や目標によって異なりますが、代表的な管理要素は温度、期間、衛生です。温度は概ね4〜12℃の範囲で管理されることが多く、低すぎると抽出が進まない一方、やや高めにすることで抽出速度を上げることができます。期間は数日から2週間程度が一般的ですが、品種や熟度、望む風味によって調整します。浸漬中は酸化や微生物のリスクを避けるため、清潔な設備と適切なSO2管理が必要です。
発酵への移行
目標の抽出が得られた段階で温度を上げ、酵母を添加してアルコール発酵を開始します。発酵中の温度上昇はさらに色素やタンニンを引き出すため、プレスのタイミングや長期の醸し方を計画しておくことが重要です。
どのような品種や状況に向くか
クリオエクストラクションは、繊細な香りを活かしたい黒ブドウ品種に向きます。例としてピノ・ノワールやガメイのように果実香を重視するワインで有効です。また冷涼な気候で成熟が穏やかな年には、色と香りを補う目的で採用されることがあります。一方で未熟果実が多い場合は注意が必要です。未熟果実に多く含まれるピラジン(メトキシピラジン)は青臭さの原因となるため、低温浸漬で強調されることがあります。
メリットと注意点
- メリット: 香りが引き立ち、色調が整う。収斂感が穏やかになる。醸造の柔軟性が向上する。
- 注意点: 長期間放置すると微生物リスクや酸化リスクが高まる。未熟果の青臭さが強調される可能性がある。設備や温度管理、SO2管理が必要。
- 実務上の対策: 衛生管理を徹底し、定期的にサンプルを取りながら抽出状況を確認する。目標に応じて温度と期間を短くするなど条件を調整する。
クリオエクストラクションと似た手法の違い
| 手法 | 特徴 | 主な目的 |
|---|---|---|
| 低温浸漬(クリオエクストラクション) | 発酵前に低温で果皮と接触。酵母活動を抑えて香りや色を抽出する。 | 香りの強化、色の調整、タンニン抑制 |
| 凍結濃縮(アイスワイン等) | 果実を凍結させて水分を分離し糖分や酸を濃縮する。 | 甘口や高濃度果実香の生産 |
| クリオマセレーション(英語表記の差異) | 用語は混同されることがあるが、低温での浸漬を指す場合が多い。 | 前処理としての香気抽出 |
まとめ
- 低温浸漬は発酵前に低温で皮と果汁を接触させ、香りと色を穏やかに引き出す技術である。
- 適用には温度・期間・衛生の管理が不可欠で、未熟果には注意が必要である。
- 目的に応じた条件設定で、果実味を活かしつつ収斂感を整える柔軟な手法となる。
関連用語: テロワール(土地・気候・人的要素の総体)、ミクロクリマ(畑レベルの局所的な気候条件)。※本文中の品種名・用語は表記統一ルールに従っています。