ブトナージュとは|澱との接触攪拌
ブトナージュは澱とワインを攪拌して旨みや口当たりを引き出す手法です。効果、実践方法、注意点を初心者にもわかりやすく解説します。
ブトナージュとは
ブトナージュ(フランス語 bâtonnage に由来)は、タンクや樽内で澱とワインを棒などで攪拌する作業を指します。ここでいう澱は主に発酵後の酵母の死骸や固形分で、フランス語ではシュール・リー(Sur Lie)と関わる技術の一つです。澱との接触時間や攪拌の頻度を調整することで、ワインに旨みや口当たりの厚み、香りの幅を与えることができます。
ブトナージュがもたらす効果
口当たりと構成要素の変化
澱にはタンパク質やマンノプロテイン、多糖類などが含まれます。これらがワインに溶け込むことで、口当たりが滑らかになり、ボリューム感が増すことがあります。シュール・リーの考え方に近く、澱由来の成分が旨みやテクスチャーを補強する点が特徴です。
香りと風味への影響
澱と接触させることで香りに複雑さが加わる場合があります。たとえば、果実の印象にトーストやブリオッシュ様のニュアンスが重なることがあり、樽熟成と組み合わせるとさらに層が深まります。ただし、過度な攪拌や澱の長期放置は、望ましくない香味を生むことがあるため管理が必要です。
実際の作業とタイミング
ブトナージュは道具と方法の選択で変わります。小規模では手作業で棒(バトン)を用いて静かに攪拌します。大規模な醸造所ではポンプや機械的な攪拌装置を使うことがあります。重要なのは攪拌の強さと頻度をコントロールすることです。
タイミングの考え方
ブトナージュを行う時期はワインのスタイルや発酵状況によります。発酵直後に行う場合は澱の分散を促し、熟成初期に行う場合は旨み成分の抽出を狙います。マロラクティック発酵(MLF)の前後での扱いも考慮が必要です。MLFは乳酸菌の働きでリンゴ酸が乳酸に変わる過程で、酸味が穏やかになり口当たりがまろやかになります。ブトナージュのタイミングによってMLFの進行や風味への影響が変わるため、計画的に実施します。
ブトナージュのスタイルと適用例
ブトナージュは主に白ワインで用いられることが多いですが、オレンジワインや一部の軽めの赤ワインでも応用されます。代表的にはシャルドネで用いられることが多く、豊かな口当たりと香ばしい要素を引き出す目的で使われます。甲州など一部の白ブドウ品種でもシュール・リー的処理と組み合わせて用いられることがあります。
- シャルドネの樽熟成と組み合わせて豊かな口当たりをつくる
- オレンジワインで果皮由来のテクスチャーを調整する
- 甲州などのシュール・リー処理で旨みを引き出す
注意点と管理上のポイント
ブトナージュは有益な効果をもたらす一方で、管理を誤ると望ましくない結果を招くことがあります。たとえば、澱の過剰な攪拌は還元的な香りや腐敗臭の原因となる場合があるほか、酸化リスクの管理も重要です。澱の量や性状、温度、衛生管理を常に確認し、安全で清潔な作業を心がけます。
- 攪拌は穏やかに行い、頻度を記録する
- 澱の量と色、匂いを定期的にチェックする
- 必要に応じて澱引きを行い、長期放置を避ける
- アペラシオンの規定やワイナリーの慣習を確認する
| 目的 | 期待される効果 | 適用例 |
|---|---|---|
| 旨みとテクスチャーの強化 | 口当たりの厚み、滑らかさの向上 | シャルドネ樽熟成、シュール・リー処理 |
| 香味の複雑化 | トーストやブリオッシュ様のニュアンスが加わる場合がある | 樽熟成との併用で層を深める |
| 澱の均一化と安定化 | 澱が分散してワインの構成が均一になる | 発酵後のタンク処理 |
まとめ
- ブトナージュは澱とワインを接触攪拌して旨みや口当たりを引き出す手法である
- 効果は口当たりの滑らかさや香りの複雑化。適切なタイミングと管理が鍵である
- 澱の性状、MLFの進行、アペラシオンやワイナリーの慣習を踏まえて使い分ける
さらに深く知るには、実際のワイナリー見学やテイスティングでブトナージュされたワインと非ブトナージュの比較を行うと理解が深まります。