ヴェレゾンとは|ブドウの色づき時期
ヴェレゾンはブドウの色づきと熟し始める時期を指します。糖度・酸の変化や香りの発達を左右し、収穫判断に直結する重要な節目です。
ヴェレゾンとは
ヴェレゾンはフランス語のvéraisonに由来し、日本では主に「果実の色づき時期」を指します。黒ブドウ品種では緑色から赤紫へ、白ブドウ品種では青緑から黄金に近い色調へ変化します。生理的には果皮中の色素変化や糖の蓄積、酸の緩やかな低下が同時に進みます。
ヴェレゾンの主要な変化要素
主な変化は次のとおりです。果皮ではクロロフィル(葉緑素)が分解され、黒ブドウ品種ではアントシアニン(色素)が蓄積して色が濃くなります。白ブドウ品種ではカロテノイドなどが相対的に目立ちます。果実内部では糖度が上昇し、リンゴ酸などの有機酸は徐々に減少します。ピラジン(メトキシピラジン)などの未熟由来の香気成分は、完熟が進むと低下する傾向があります。
ヴェレゾンと栽培管理
ヴェレゾンは栽培者にとって重要な管理期です。果実の成熟が始まると、葉面管理や灌水、摘房・摘粒などの作業で日照や空気流通を調整し、病害の発生を抑えつつ均一な熟度を目指します。収量管理は糖とフェノールの蓄積に直結するため、必要に応じて房数を調整します。
- 葉面管理:果実への日照と空気の流れを確保する
- 摘房・摘粒:成熟を均一にするための果実数調整
- 灌水管理:過度の水分で果実が水っぽくなるのを防ぐ(地域に依存)
- 病害防除:湿度が高まる時期なのでうどんこ病や灰色かび病に注意
- 試験収穫の準備:糖度・酸度・種子の色などを定期的に確認する
ヴェレゾンがワインにもたらす影響
ヴェレゾン以降の成熟は、最終的なワインのスタイルに直結します。糖が蓄積することでアルコール分が決まり、酸の相対的な低下は口当たりやバランスに影響します。黒ブドウ品種ではアントシアニンとタンニンの成熟具合が果実味と渋みの質を左右します。収穫時の判断は、果皮色だけでなく種子の色や香り、味わいの総合で行うことが重要です。
醸造上の選択にも影響します。早めに収穫すれば酸が高めなワインになり、遅めに収穫すれば熟した果実の香りやアルコールが出やすくなります。マロラクティック発酵(MLF)などの醸造手法は、ヴェレゾン後の果実の酸構成を踏まえて選ばれます。
テロワールとミクロクリマの影響
ヴェレゾンの時期や進行速度は地域や畑ごとに異なります。ここで使う用語は次のとおりです。テロワールは土地・気候・人的要素の総体で、人的要素には「慣習・知識・継承」を含みます。クリマは「自然条件と歴史的利用が結びついた」最小単位のテロワール区画で、ミクロクリマは「畑レベルの」局所的な気候条件を指します。これらの違いがヴェレゾンのタイミングや均一性に影響します。
例として、斜面の向きや土壌の保水性は昼夜の温度幅に影響を与え、昼夜温度差が大きいと糖の蓄積と香り成分の発達が促される傾向があります。また、地域の栽培慣行という人的要素も、収穫基準や管理方法に反映されます。
収穫判断の指標と実務上のポイント
- 糖度(果実の甘さ)と酸のバランス
- 果皮の色の均一性と種子の色
- 香りの発達(果実香や品種特有の香り)
- 望むワインスタイル(酸を生かすか果実味を重視するか)
- テロワールや当年の気候条件を踏まえたリスク管理
| 段階 | 見た目の変化 | 栽培者が注目する点 |
|---|---|---|
| 果実肥大期 | 果粒が大きくなる、色はまだ緑 | 水分管理と病害防除 |
| ヴェレゾン | 色づきと糖の蓄積が始まる | 日照管理・試験収穫の開始 |
| 成熟期 | 糖度上昇、酸が緩やかに低下、香りが明確に | 収穫時期の最終判断と収量調整 |
シャンパーニュとヴェレゾン(補足)
「シャンパーニュ」というアペラシオンは、定義された原産地において、その土地特有のテロワールと、定められた栽培・醸造規定に基づいて造られたスパークリングワインにのみ使用が認められている。
シャンパーニュのような地域では、ヴェレゾン後の酸保持が特に重要です。基準となる酸を確保しつつ、ベースワインのバランスをどう設計するかが収穫戦略の核になります。
よくある誤解
- 誤解:果皮の色だけ見れば収穫時期が分かる → 正:種子の色や香り、酸のバランスも含めて総合判断する必要がある
- 誤解:遅く収穫すれば必ず良いワインになる → 正:気候やテロワール、望むスタイルによって最適時期は変わる
- 誤解:ヴェレゾンが一斉に進む → 正:同じ畑でもミクロクリマの差で遅早が出る
まとめ
- ヴェレゾンは色づきと糖蓄積が始まる成熟の転換点で、収穫判断に直結する
- 時期や進行はテロワール(土地・気候・人的要素)とミクロクリマに左右される
- 栽培と醸造の選択はヴェレゾン以降の果実の状態を基に総合的に決める