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甲州シュール・リーとは|旨味を引き出す製法

甲州シュール・リーとは|旨味を引き出す製法

甲州シュール・リーの特徴と効果、醸造のポイント、料理とのペアリング、樽やオレンジワインとの違いを初心者向けにわかりやすく解説します。

甲州シュール・リーとは

シュール・リー製法(Sur Lie)は、発酵後の澱とワインを一定期間接触させたまま熟成する技法です。澱から旨味成分やアミノ酸が溶け出し、味わいに厚みと複雑さが生まれます。甲州は白ブドウ品種に分類され、皮が淡く色づくグリ系品種(灰色ブドウ品種)であるため、シュール・リー以外にもオレンジワインや樽熟成など多様な表現が可能です。

シュール・リー製法の基本と効果

工程の要点

  • 発酵完了後、澱とワインを分離せずタンクに残す。
  • 低温でゆっくり熟成させることで澱由来の成分が溶出する。
  • 定期的に澱を攪拌するバトナージュ(動詞: バトナージュを行うこと)で質感を高める場合がある。
  • 熟成期間はスタイルにより数週間〜数か月と幅がある。

シュール・リーの効果としては、旨味・コクの向上、口当たりの厚み、香味の複雑化が挙げられます。酸味とのバランスが良くなると、甲州特有の繊細な柑橘香とミネラル感が食事とよく調和します。禁止表現に注意して言うと、渋みが消えるではなく渋みが和らぐ、という表現が適切です。

甲州の基本情報と背景

甲州は日本固有のブドウ品種で、白ブドウ品種に分類されます。皮色がピンクがかった灰色を帯びるため、グリ系品種(灰色ブドウ品種)として扱われます。2010年にOIVに登録され、国際的にも認知されました(出典: OIV公式)。また、主要な生産地である山梨では多くのワイナリーが活動しており、勝沼を中心に89軒のワイナリーが存在します(出典:国税庁「酒類製造業及び酒類卸売業の概況」令和6年12月)。

甲州におけるシュール・リーの取り入れ方

醸造上の選択肢と狙い

甲州でシュール・リーを採用する目的は、果実味の繊細さを残しつつ旨味や厚みを付加することです。ステンレスタンクでの発酵後に澱と接触させるのが一般的ですが、熟成の温度管理や澱の状態を見ながら期間を決めます。樽熟成と組み合わせることで香ばしい要素が加わり、より複雑なボディを得られます。

  • ステンレスタンクでシュール・リー→フレッシュさを保ちつつ旨味を付与
  • シュール・リー+樽熟成→ナッツやトースト香が加わる
  • 短期間のスキンコンタクト→オレンジワイン的な複雑さを演出

甲州の主なスタイルとシュール・リーの位置づけ

甲州は表現の幅が広く、主に次のスタイルが一般的です。シュール・リー製法は旨味とコクを引き出す代表的な手法で、フレッシュタイプや樽熟成タイプ、オレンジワインと並んで甲州らしさを示す選択肢の一つです。以下の表で特徴を比較します。

スタイル特徴適した料理ボディの目安
シュール・リー製法澱と接触して旨味と厚みが増す。複雑さとやわらかな口当たり。刺身、天ぷら、出汁を効かせた料理ライト〜ミディアムボディ
樽熟成タイプオーク由来のバニラやトースト香が加わる。骨格があり余韻が長め。グリルした白身、きのこ料理、クリーム系ミディアムボディ〜ミディアムボディ
オレンジワイン皮ごと発酵して琥珀色に。タンニンやスパイス感が現れる。発酵食品、スパイス料理、熟成チーズミディアムボディ〜フルボディ

甲州に合う料理とペアリングの考え方

甲州は和食と相性が良いことで知られます。ペアリングの説明では、同調・補完・橋渡しというフレームを使うと分かりやすいです。例えばシュール・リーの甲州は旨味とコクが増すため、出汁の旨味と同調し、油脂のある料理には酸味で補完する役割を果たします。

  • 刺身・寿司:甲州のミネラル感が魚の旨味と同調する
  • 天ぷら:酸味が油の重さをリフレッシュして補完する
  • 焼き魚の塩焼き:柑橘の香りが橋渡しとなり相性を高める

実践:購入と飲み方のポイント

初心者はまずシュール・リーの表示がある甲州を選ぶと、旨味のある白ワイン体験が得られます。サービング温度は8〜12℃が目安で、冷やし過ぎると香りが閉じるため注意してください。グラスはチューリップ型グラスが適しています。デキャンタは通常不要です。

醸造者向けの実務ポイント

  • 澱管理:雑味につながらないように澱の状態を定期的に確認すること。
  • 温度管理:低温で安定した熟成を行うとフレッシュさが残る。
  • バトナージュの頻度は狙うスタイルによって調整する。
  • 酸のバランスを考え、必要に応じてマロラクティック発酵を選択する(MLFは酸味を穏やかにし、まろやかな口当たりを与える)。

よくある疑問と短い回答

シュール・リーとオレンジワインはどう違うか

シュール・リーは澱と接触して旨味を引き出す手法で、色は基本的に白ワインの範囲にとどまります。オレンジワインは皮ごと発酵させるため色付きやタンニン感が強く、より力強い風味になります。甲州はグリ系品種(灰色ブドウ品種)なのでオレンジワインにも適性があります。

シュール・リーの表示を見分けるには

ラベルに「シュール・リー」や「Sur Lie」と明記されていることが多いです。醸造ノートや生産者コメントに「澱との接触」「バトナージュ」などのキーワードがあれば同様の処理が行われている可能性があります。

まとめ

  • シュール・リー製法は澱と接触させることで甲州の旨味とコクを引き出す有効な手法。
  • 甲州は白ブドウ品種でグリ系品種(灰色ブドウ品種)に分類され、オレンジワインや樽熟成など多彩な表現が可能。
  • 山梨を中心に89軒のワイナリーがあることや、2010年にOIV登録された点は甲州の信頼性を裏付ける(ワイナリー数: 出典:国税庁「酒類製造業及び酒類卸売業の概況」令和6年12月、OIV登録: 出典: OIV公式)。

甲州の品種分類表記は「白ブドウ品種」とし、必要に応じて「グリ系品種」「灰色ブドウ品種」と明記しています。

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