フィルトラシオンとは|濾過の種類と品質への影響
フィルトラシオンはワインの澱や微生物を除去して安定性と清澄度を高める工程です。方式ごとの特徴と品質への影響、実務上の判断ポイントを分かりやすく解説します。
フィルトラシオンとは
フィルトラシオン(filtration、フランス語でフィルトラシオン)は、ワイン中の固形分や微生物を物理的に除去する操作です。主な目的は外観の清澄化、微生物的安定、ボトル内での二次発酵や混濁の防止などです。過度な濾過は香り成分や口当たりに影響を与える場合があるため、ワインのスタイルや表現したい要素を踏まえた判断が求められます。ここでいうテロワールは、テロワール: 土地・気候・人的要素の総体として、濾過の方針にも影響します。人的要素は慣習・知識・継承を含み、醸造家の判断がどのように反映されるかが重要です。
主な濾過の種類
粗濾過(デプスフィルトレーション)
粗濾過は大きめの固形分を捕捉する方式です。珪藻土やセルロースなどのろ材を使う深層型の方式が典型で、濁りや澱を効果的に取り除きます。負荷に強く処理量が多い一方、非常に微細な成分は通過するため仕上がりはややナチュラルな印象になります。
カートリッジ/膜ろ過(精密ろ過)
ポリプロピレンやセルロースなどのカートリッジや膜を用いる方式で、粒子除去の精度が高いです。微生物レベルでの安定を狙う場合は微細孔の膜を使い、澱や酵母を物理的に除去して瓶詰め後の問題を防ぎます。膜の選択で除去の程度を調整できるため、香りへの影響を最小限に抑えながら安定化を図れます。
クロスフロー(タンジェンシャル)ろ過
クロスフローろ過は液が膜に対して平行に流れる方式で、膜への詰まりを防ぎつつ長時間の処理が可能です。回収率が高く、香り成分や色素の損失を抑えやすい点が特徴です。設備投資は大きいものの、特に高品質ワインや大量処理が必要な場合に有効です。
プレート&フレームろ過
フィルタープレスとも呼ばれる方式で、フィルタープレート間にろ材をはさんで圧力で濾過します。ろ材交換で目詰まりに対処でき、粗濾過から中程度の精度まで対応します。小規模から中規模のワイナリーで広く使われます。
| 方式 | 主な特徴 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 粗濾過(珪藻土等) | 大きな固形分を捕捉する深層ろ過 | 処理量が多くコストは比較的低い | 非常に細かい粒子は除去できない |
| カートリッジ/膜ろ過 | 微細孔で精密に除去 | 微生物安定化に有効、清澄度が高い | 目詰まりと交換コストが課題 |
| クロスフローろ過 | 膜に対して並行流で処理 | 香りの損失が少なく回収率が高い | 設備投資が大きい |
| プレート&フレーム | フィルタープレス方式 | 小〜中規模に向く、柔軟性がある | ろ材の選択で性能に差が出る |
濾過がワインの品質に与える影響
外観と安定性
まず視覚的なクリアさが向上します。さらに酵母や細菌を除去することで、瓶内での予期せぬ発酵や混濁を防ぎ、製品としての安定性が高まります。とくにスパークリングワインや淡色の白ワインでは、清澄度の管理が重要です。
香り・風味への影響
濾過は香り成分や微粒子由来の口当たりに影響することがあります。一般に粗い濾過は風味の保持に優れ、非常に精密な濾過は一部の香りやテクスチャーを和らげる場合があります。表現したいテロワール(テロワール: 土地・気候・人的要素の総体)やワインのスタイルに合わせて濾過の程度を決めることが求められます。
微生物管理と安全性
滅菌に近いレベルの濾過は、ボトル内での微生物的変化を抑え、品質保持期間を安定させます。とくにナチュラルワインや軽い絞りのスタイルでは、濾過の有無が出荷後の挙動に影響するため、プロダクトコンセプトに基づいた選択が必要です。
濾過のタイミングと判断基準
- 目的:清澄化、微生物安定、外観の整備などを明確にする
- ワインのスタイル:表現したい香りや口当たりを優先するか安定性を優先するか
- 設備とコスト:処理量や設備投資、維持コストを勘案する
- ボトリング前の検査結果:残糖、微生物負荷、澱量に応じた調整
一般的にはブレンドや最終調整後、ボトリング前に行うことが多いですが、二次発酵を意図するスパークリングワインなど、工程に応じたタイミング調整が必要です。濾過を繰り返すことで望ましい安定性が得られる一方、過度な処理はワインの個性を損なう可能性があるため、段階的に評価しながら進めます。
シャンパーニュというアペラシオンは、定義された原産地において、その土地特有のテロワールと、定められた栽培・醸造規定に基づいて造られたスパークリングワインにのみ使用が認められています。
実務的な注意点
濾過作業では衛生管理とろ材の管理が重要です。膜の洗浄やろ材の交換頻度を適切に設定し、目詰まりやクロスコンタミネーションを防ぎます。また、テストボトリングや官能評価を組み合わせ、濾過後の香りや口当たりの変化を確認するプロセスを組み込むと安全です。
まとめ
- フィルトラシオンは清澄化と微生物的安定を目的とする一方、方式により香りや口当たりに影響を与えるため目的に応じた選択が必要です。
- 方式ごとにメリットとデメリットがあり、粗濾過は風味保持に優れ、膜ろ過やクロスフローは高い安定性を得やすいという特徴があります。
- 工程のタイミング、設備・コスト、テスト評価を組み合わせて段階的に判断し、テロワール(テロワール: 土地・気候・人的要素の総体)表現とのバランスを取ることが重要です。