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エレヴァージュとは|ワインの熟成・育成期間を解説

エレヴァージュとは|ワインの熟成・育成期間を解説
#入門#用語解説

エレヴァージュは発酵後から瓶詰めまでの熟成・育成期間を指します。目的や容器、期間で香味が大きく変わる過程を初心者向けに解説します。

エレヴァージュとは

エレヴァージュ(フランス語: élevage)は、発酵が終わったワインを瓶詰めまで育成・熟成させる期間を指します。発酵で得た原料を安定化させ、香味を整え、将来の熟成ポテンシャルを育てる工程です。栽培時のテロワール(土地・気候・人的要素の総体)やブドウの成熟度は前提として影響しますが、エレヴァージュの選択によって最終的な表現は大きく変わります。

エレヴァージュの目的

  • 香味の完成:果実香や二次香(熟成香)を育て、味のバランスを整える
  • 安定化:澱の沈降や清澄、微生物的安定を図る
  • 構造の調整:タンニン、酸、アルコールのバランスを整え、余韻や質感を育てる
  • 熟成ポテンシャルの付与:長期保存や瓶熟成に向く構成を作る

期間と段階

エレヴァージュ期間はワインのスタイルや生産者の方針で大きく異なります。軽やかな白ワインは数週間から数か月、樽熟成を行う白や赤ワインは数か月から数年、長期熟成を想定するワインはさらに瓶熟成を経ます。期間はブドウの成熟度やタンニン量、酸の残存、目指すスタイルが判断基準となります。

典型的な段階

  • 発酵直後の回復期間:澱やCO2の管理を行い安定させる(数日〜数週間)
  • 樽/タンク熟成期:酸素供給や樽由来の成分で香味を整える(数か月〜数年)
  • 瓶詰め直前の調整:ブレンド、清澄、濾過などで品質を整える(数週間〜数か月)
  • 瓶内熟成:瓶でさらに香味が統合される(場合により数年〜数十年)

容器と管理がもたらす違い

エレヴァージュで最も特徴的な要因は容器の選択です。オーク樽は微量の酸素供給と木由来の成分で複雑さや香りの要素を与えます。ステンレスタンクは酸化を抑え果実味を前面に押し出します。コンクリートやセメントは中間的な挙動を示すことが多く、温度の安定性も利点です。

容器特徴向くワインのタイプ
オーク樽(新樽〜古樽)木由来の香りやタンニンの供給。微量の酸素を通すことで構造が整う赤ワイン、樽熟成を目的とした白ワイン
ステンレスタンク酸化を抑え、果実味とフレッシュさを保持。温度管理が容易フレッシュな白ワイン、軽めの赤ワイン
コンクリート/セメント酸素透過は少なめで温度安定性が高い。適度な丸みを与えることがあるナチュラル寄りのスタイルや発酵兼用
瓶内熟成(瓶詰め後)酸素がほとんど入らない環境で香味が統合される。瓶による微調整長期熟成向けの赤ワインや一部の白ワイン、シャンパーニュ等

エレヴァージュがもたらす主な変化

エレヴァージュ中は香りの展開、タンニンの丸み、酸の印象変化、色調の安定などが進みます。例えば黒ブドウ品種由来のタンニンは樽熟成で角が取れて渋みが和らぎ、果実香に樽由来のバニラやスパイスが重なります。一方、酸味はマロラクティック発酵や樽接触により穏やかになる傾向があります。

マロラクティック発酵(MLF)

マロラクティック発酵(MLF)は、乳酸菌の働きによりワイン中のリンゴ酸が乳酸に変換される過程です。これにより酸味が穏やかになり、まろやかな口当たりとバターやクリームのようなニュアンスが生まれます。MLFは特に赤ワインや一部の白ワインで意図的に行われます。

シュール・リー

シュール・リー(Sur Lie)は、発酵後の澱(酵母の死骸)とワインを接触させたまま熟成させる製法です。澱から旨み成分が溶け出し、厚みのある味わいと複雑な風味が生まれます。かき混ぜる(バトナージュ)ことで口当たりに変化を与えることもあります。

実践例と選び方のポイント

  • 軽やかな白を目指す場合:ステンレスで短期間のエレヴァージュにして果実味を活かす
  • 複雑さを求める白:バリックやシュール・リーで厚みと熟成香を付与する
  • ストラクチャー重視の赤:新樽や長期樽熟成でタンニンを整え、瓶熟成を見越す
  • 早飲み向けの赤:短めの樽熟成かステンレスで果実の鮮度を残す

注意点

  • 酸化管理:酸素との接触は香味を育てる一方で過剰な酸化リスクがあるため注意が必要
  • 清潔管理:容器や接触機器の衛生が品質安定に直結する
  • 過度な木由来風味:新樽の使用量が多いと樽香が前面に出すぎることがある
  • ボトリングのタイミング:早すぎる瓶詰めは未熟な要素を封じ込め、遅すぎるとコストやリスクが増える

シャンパーニュ補足

「シャンパーニュ」というアペラシオンは、定義された原産地において、その土地特有のテロワールと、定められた栽培・醸造規定に基づいて造られたスパークリングワインにのみ使用が認められている。シャンパーニュの多くは瓶内二次発酵と瓶熟成を経ることで独自の香味を獲得します。

さらに深く知るために

エレヴァージュは技術的な選択と哲学が交差する工程です。生産者の意図、テロワール(土地・気候・人的要素の総体)、そして市場や消費者の嗜好が最終的なスタイルを決めます。実際の違いを理解するには、同じヴィンテージや品種で容器や期間を変えた比較試飲が有効です。

まとめ

  • エレヴァージュは発酵後の育成期間で、容器や期間で香味や安定性が形成される
  • 樽、ステンレス、コンクリートなどの選択と管理がワインの表現を左右する
  • MLFやシュール・リーなどの手法は目的に応じて使い分けられ、意図的な熟成設計が重要

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