スーティラージュとは|澱引き作業の目的と方法
スーティラージュ(澱引き)の目的と代表的な方法を、初心者にもわかりやすく解説します。工程・タイミング・注意点を実用的にまとめました。
スーティラージュとは
スーティラージュ(soutirage)はフランス語由来の用語で、醸造における澱引き作業を指します。発酵後や熟成中に容器底に沈んだ澱を残して、上澄みのワインだけを別の容器に移します。澱を取り除くことで清澄化を進め、酸化管理や微生物リスクの低減、香味の安定を図ります。
澱引きの目的
- 清澄化:ワインの見た目を澄ませ、濁りを減らす
- 安定化:澱に由来する還元臭や不安定要因を取り除き、品質を安定させる
- 風味のコントロール:過度な硫化物や苦味成分の発生を抑え、果実味や酸味のバランスを整える
- 熟成管理:樽やタンク内の澱が過度に増えた場合に取り除き、意図する熟成を維持する
主な方法と特徴
澱引きの方法はワイナリーの規模やワインのスタイルで選ばれます。代表的な方法には次のようなものがあります。
- 重力移送(グラヴィティ): 高低差を使って静かに移す方法。酸素接触を最小限に抑えやすい。中小規模で好まれる。
- サイフォン移送: ホースの比重差を利用して移送する手法。小ロットで手軽に行える。
- ポンプ移送: ワイン専用の低せん断ポンプで移す。作業効率が高く大規模設備に向くが、扱い方で酸素が入ることがあるため注意が必要。
- トップオフ(補液)を併用: タンク間の移送後に空間を適切なワインで満たし、酸化を防ぐ
タイミングと頻度
澱引きのタイミングはワインの状態と目指すスタイルに依存します。一次発酵が終わった直後に行う場合、発酵由来の粗い澱を取り除いて発酵を安定させます。熟成中は澱の量やにおいを見て複数回行うことがあります。清澄化を目的に短期間で複数回実施する一方、シュール・リー(澱と接触させて熟成する手法)の場合は澱を残して風味を引き出します。
シュール・リーとの違い
シュール・リー(Sur Lie)は、発酵後の澱とワインを接触させたまま熟成する手法です。澱から旨み成分やテクスチャーがワインに移り、厚みや複雑さが生まれます。一方でスーティラージュは澱を除去する作業です。どちらを採るかはワインの目指す方向性次第です。
スーティラージュがワインに与える影響
適切な澱引きはワイン品質にプラスに働きます。見た目の向上に加え、還元的な香りの抑制や微生物リスクの低減が期待できます。また、澱を長期間放置すると望ましくない香りが出ることがあるため、タイミング良く澱を除くことで風味が安定します。澱引きの際は酸素接触を管理し、必要に応じて窒素や二酸化炭素で保護することが重要です。
注意点と衛生管理
- 器具やホースはワイン専用の洗浄・消毒を行う
- ポンプ使用時は低せん断・低酸素の機器を選ぶ
- 移送速度や高低差で泡立ちや酸素混入を防ぐ
- 澱の量とにおいを確認し、必要なら分析を行う
実践手順(基本)
- タンク底の澱量と状態を確認する
- 移送先の容器を清掃・消毒し、必要なら保護ガスを充填する
- 低速で静かに移送を開始する(重力移送や低せん断ポンプ)
- 澱が近づいたら移送を停止し、澱を残す
- 移送後はトップオフして空間を最小化し、密閉する
方法の比較表
| 方法 | メリット | デメリット | 適用例 |
|---|---|---|---|
| 重力移送 | 酸素混入を抑えやすい、優しい移送 | 設備に高低差が必要、労力がかかる | 小規模ワイナリー、プレミアムキュヴェ |
| サイフォン移送 | 単純でコストが低い | 作業者の慣れが必要、小ロット向け | 少量タンクの澱引き |
| ポンプ移送 | 効率的で大容量に対応 | 取扱いで酸素が入る可能性、設備投資が必要 | 大規模生産ライン |
| 濾過(補助手段) | 短時間で清澄化できる | フィルター目詰まりや風味変化のリスク | 瓶詰め前の最終処理 |
補足:シャンパーニュでは、アペラシオンの規定に基づいた工程管理が重要です。シャンパーニュというアペラシオン名は、定められた原産地と栽培・醸造規定に従って造られたスパークリングワインにのみ使用が認められています。澱管理も規定の一部として重要視されます。
まとめ
- スーティラージュは澱を取り除く作業で、清澄化と品質安定が主目的です。
- 方法は重力移送、サイフォン、ポンプなどがあり、スタイルや規模で選びます。
- 衛生管理と酸素管理が品質を左右するため、タイミングと機材選定が重要です。
さらに知りたい方へ
スーティラージュは醸造現場で基礎となる作業ですが、ワインの個性を左右する繊細な工程でもあります。興味があれば、現場見学や実習で実際の機器の使い方や空気管理を確認すると学びが深まります。