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アシディフィカシオン|補酸が必要な理由と方法

アシディフィカシオン|補酸が必要な理由と方法

アシディフィカシオン(補酸)は、ブドウやワインの酸度を調整してバランスや安定性を確保する手法です。目的・時期・方法と実務上の注意点を初心者向けに解説します。

アシディフィカシオンとは

アシディフィカシオンは、醸造用語で「補酸」を指します。ブドウや果汁、あるいは発酵中・発酵後のワインに酸を加えて酸度やpHを調整する手法です。目的は味わいのバランスを整えることと、微生物学的な安定性や化学的安定性を確保することです。

補酸が必要になる場面

  • 収穫時に酸が十分でない場合:特に温暖な年や成熟が進みすぎたブドウで発生しやすい
  • 発酵や熟成によって酸が減少した場合:マロラクティック発酵(MLF)などで酸性が変化することがある
  • スタイル上の理由:果実味と酸味のバランスを目指す場合や、保存性を高めたい場合
  • ブレンド調整:異なる畑や品種を混ぜる際に全体の酸度を整えるため

主な補酸の方法と特徴

酒石酸(タルタル酸)の添加

最も一般的な方法は、酒石酸(タルタル酸)を添加することです。酒石酸はワイン中で自然に存在する主要な酸の一つで、添加によって酸度を直接かつ予測可能に上げられます。添加の際は溶解や均一混和、適正な測定に注意します。

ブレンドによる調整

高い酸を持つ別のバッチや別品種の果汁・ワインとブレンドして全体の酸度を上げる方法です。自然由来の酸を利用でき、風味への違和感が少ない利点がありますが、供給源の確保や風味調和の検討が必要です。

クエン酸やリンゴ酸の利用

クエン酸やリンゴ酸を用いることもありますが、これらは風味に与える影響や微生物学的挙動が異なります。例えばクエン酸は柑橘系のニュアンスを与える傾向があり、規制やワインのスタイルに応じて慎重に選択します。

添加のタイミング

補酸は収穫前(希に)、果汁段階、発酵前、発酵中、発酵後とさまざまなタイミングで行われます。一般的には発酵前や発酵初期に行うことで酵母の活動や香味の立ち上がりを安定させやすくなります。タイミングによって風味や微生物管理への影響が変わるため、計画的に行います。

実務上の注意点

  • 分析に基づく調整:pHや総酸(遊離酸・結合酸)を測定して目標値を決める
  • 少量ずつの添加:一度に大量添加せず、段階的に調整する
  • 微生物への影響:補酸が酵母・乳酸菌の挙動に影響するため、発酵管理を行う
  • 風味への配慮:酸の種類で香味への影響が異なるため試験的に評価する
  • 法規制の確認:国やアペラシオンによって補酸の可否や上限が異なる

方法比較表

方法メリットデメリット推奨される場面
酒石酸(タルタル酸)添加酸度が正確に上げられる。既存の酸組成と整合性が高い。添加感や過剰調整のリスク。溶解管理が必要。温暖な産地で酸が不足した場合、発酵前の調整。
ブレンド自然由来で風味の一体感が得られやすい。高酸の供給源が必要。風味調和の検討が必要。異なる畑や品種のバランス調整。
クエン酸/リンゴ酸添加特定の風味や微生物挙動を調整できる。風味変化や微生物安定性への影響が大きい。特殊なスタイルを目指す場合や微調整。

規制とアペラシオン上の考え方

補酸は国やアペラシオンによって規制が異なります。例えば一部の原産地呼称制度では補酸が制限または禁止されている場合があります。シャンパーニュというアペラシオンについては、定義された原産地と規定に基づいて造られたスパークリングワインにのみその名称が用いられる点が重要です。補酸を計画する際は、該当する法規やアペラシオン規定を事前に確認してください。

現場での実践例とチェックポイント

  • 目標pHと総酸を数値で決める
  • 少量を小スケールで試験し、官能評価を行う
  • 発酵温度や酵母の選択と合わせて管理する
  • 添加後は時間を置いて再測定し、安定性を確認する
  • アペラシオン規定の確認と記録の保管

よくある誤解と留意点

補酸は万能ではありません。酸を加えれば味がすべて良くなるわけではなく、果実味やタンニンとのバランス、全体のスタイルを考慮する必要があります。また、補酸はワインの安定性向上に寄与しますが、添加の種類や量によっては逆に微生物リスクや香味の不整合を招くこともあります。

まとめ

  • アシディフィカシオンは酸度とpHを調整し、味わいのバランスや安定性を高める手法である。
  • 酒石酸添加、ブレンド、酸の種類選択など方法は複数あり、目的とタイミングで使い分ける必要がある。
  • 法規制やアペラシオン規定を確認し、分析と小スケール試験を経て慎重に実施する。

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