VdNとVdLとは|酒精強化ワインの分類
VdNとVdLはどちらも酒精強化ワインだが、製法と味わいが異なる。この記事では両者の違いや代表例、選び方と合わせ方を初心者向けにわかりやすく解説します。
VdNとは
VdNはフランス語で「Vin Doux Naturel」を指す呼称で、日本語では「自然な甘さのワイン」と理解されることがあります。ここでは「VdN」と表記します。VdNは発酵が始まった段階、つまり果汁が糖をアルコールに変え始めたときにブランデーなどの中性スピリッツを添加して発酵を止めます。結果としてブドウ由来の残糖と原料果実の芳香がそのまま残り、甘味と果実性が前面に出るスタイルになります。
代表的な地域と品種
VdNは南フランスで多く見られます。代表的なスタイルには、マスカット系を用いるものや、グルナッシュ(黒ブドウ品種名)を使って造られるものがあります。各アペラシオン(アペラシオン: 「法的に保護・規定する」原産地呼称制度)ごとに使用できる品種や加水率、アルコール度数の基準が定められている点も特徴です。
味わいとスタイルの特徴
VdNはブドウ由来のフレッシュな果実香やフローラルなアロマが残りやすい一方で、アルコール感と糖がバランスを作ります。製法上、発酵途中で止めるため酸味と甘味のバランスが良く、食前酒やデザートワインとして親しまれます。熟成させると、より複雑でナッティなニュアンスが出る場合もあります。
VdLとは
VdLは「Vin de Liqueur」に相当する表記で、ここではVdLとします。VdLは未発酵の果汁(果汁そのもの)にスピリッツを添加することで発酵を起こさせず、果汁の糖分をそのまま残したまま強化する方式です。結果として非常に濃厚でリキュールに近い甘さと果実感を持つワインができます。
代表的な地域と呼称例
VdLに該当するワインは地方によって呼び方や規定が異なります。たとえばジュラ地方の一部で造られるマカン類(地域名や呼称は各地域の規定に基づきます)は、果汁にブランデー等を加えて造られることがあります。VdLは生産者の技術や、土地の個性であるテロワール(テロワール: 土地・気候・人的要素の総体)が反映されやすい点も特徴です。人的要素には慣習・知識・継承が含まれます。
味わいと利用場面
VdLは甘味が非常に強く、テクスチャーが濃厚です。そのまま食後酒として楽しむほか、デザートへのかけ汁や製菓用途にも使われます。保存性が高く、開栓後もしばらく風味を保ちやすい点が便利です。
VdNとVdLの主な違い
- 強化のタイミング:VdNは発酵途中で強化、VdLは未発酵果汁への強化
- 糖の由来:VdNはブドウ由来の残糖が主体、VdLは果汁の糖をそのまま保持
- 味わい:VdNは果実味と酸味のバランス、VdLはより濃厚でリキュール的な甘さ
- 用途:VdNは食前酒やデザートワイン、VdLは食後酒や製菓用途にも向く
- 規定:両者とも各アペラシオンの規定に従うため、地域ごとに細かな違いがある
| 項目 | VdN | VdL |
|---|---|---|
| 強化の時期 | 発酵途中で酒精を添加して発酵を止める | 未発酵の果汁に酒精を添加して発酵を起こさない |
| 糖分の由来 | ブドウ由来の残糖が主体 | 果汁の糖分をそのまま保持 |
| 典型的な味わい | 果実香と甘味、酸味のバランスが良い | 非常に濃厚でリキュール的な甘さ |
| 代表的な用途 | 食前酒、デザートワイン | 食後酒、デザートソースや製菓への利用 |
| 規格の特色 | アペラシオンごとの栽培・醸造規定に従う | 地域や生産者の慣習により差が出る |
他の酒精強化ワインとの違い
酒精強化ワインにはポートやマディラ、シェリー(ヘレス)などもあります。これらはVdNやVdLとは別の伝統的な製法や熟成法を持ちます。たとえばシェリーは発酵後に強化する場合があり、さらに熟成方法によって生まれるスタイルが大きく変わります。分類の違いは製法のタイミングや熟成法に起因します。
選び方と合わせ方
VdNとVdLを選ぶ際は、甘さのタイプと用途で考えるとわかりやすいです。フレッシュな果実香と酸味のバランスを楽しみたいならVdN、非常に濃厚な甘さや製菓用途、濃い風味と合わせたいならVdLが適しています。飲食の組み合わせでは、以下のフレームワークが使えます。
- 同調:樽香やナッツ香を持つVdNは焼き菓子と同調しやすい
- 補完:VdLの強い甘さは酸味のあるフルーツやチーズの酸味で補完される
- 橋渡し:果実味の強いVdNはフルーツソースの橋渡し役になる
品質や表記を確認するポイント
ラベルを見る際は「VdN」「Vin Doux Naturel」「Vin de Liqueur」などの表記のほか、アペラシオン名や使用品種、アルコール度数の記載を確認してください。アペラシオンは地域ごとの規定に基づく表示で、法的に保護されるため内容の目安になります。テロワール(テロワール: 土地・気候・人的要素の総体)やクリマ、ミクロクリマといった用語が示されている場合は、土地や畑レベルの特徴が反映される可能性があります。
まとめ
- VdNは発酵途中で強化してブドウ由来の残糖と香りを残す酒精強化ワインで、果実味と酸味のバランスが特徴。
- VdLは未発酵果汁に酒精を加えて発酵させずに造るため、より濃厚でリキュール的な甘さになる。
- 用途やペアリングで使い分けると楽しみが広がる。ラベルのアペラシオンや品種表示を確認して選ぶとよい。
補足:この記事ではVdNとVdLの基本的な違いと利用法を中心に解説しました。地域ごとの細かな規定や歴史的背景は各アペラシオンの規定書や公的資料で確認してください。