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ティラージュリキュール|二次発酵の酵母と糖

ティラージュリキュール|二次発酵の酵母と糖

ティラージュリキュールは二次発酵を起こすための糖と酵母の混合液です。酵母の選択や糖の種類・量で泡質や熟成の方向性が変わります。製造と管理のポイントを初心者向けに解説します。

ティラージュリキュールとは

ティラージュリキュールは、二次発酵を始めるためにワインに添加する混合液です。主に糖と酵母、場合によっては栄養源や希釈用のベースワインが含まれます。ここでいう二次発酵は、一次発酵後のワインに新たに酵母を加えて糖を発酵させ、二酸化炭素を閉じ込める工程を指します。瓶内二次発酵ではこの工程により溶存炭酸が生まれ、独特の泡立ちと熟成香が形成されます。

二次発酵での酵母の役割

酵母は糖をアルコールと二酸化炭素に変換する働きを担います。二次発酵で求められる酵母には、安定した発酵力、アルコールや圧力への耐性、沈降性(デポジット化のしやすさ)やオートリシス(酵母死後の風味寄与)といった特徴が重要です。主にサッカロマイセス属の醸造酵母が使われ、瓶内での働きとその後の熟成でどのような香味を残すかが選定の基準になります。

酵母の選択ポイント

  • 発酵力(短時間で安定して発酵を終えること)
  • アルコール耐性と耐圧性(瓶内圧に耐える能力)
  • オートリシス性(熟成中に旨みや複雑さを与える余地)
  • 沈降性・澱分離のしやすさ(デゴルジュマン作業との相性)
  • 保存・取り扱いの容易さ(乾燥酵母の再活性化など)

糖(補糖)の種類と役割

ティラージュリキュールに用いる糖は、主に蔗糖を溶かした糖液が使われます。糖の量は二次発酵で発生する二酸化炭素の量と最終圧力に直結します。補糖の種類や純度は発酵のスムーズさや副次的な風味に影響します。加える糖の量はワインの目標とするスタイル(軽やかな発泡かしっかりした泡立ちか)やボトル内圧、デゴルジュマンやドサージュ後の味わいを考慮して決定されます。

糖量とワインのスタイルの関係

  • 少なめの糖:控えめな圧力と繊細な泡。ドライ寄りの仕上がりになりやすい
  • 多めの糖:高めの圧力としっかりした泡。熟成中の味わいが重厚になりやすい
  • 糖の種類:純度の高いショ糖が汎用的。副成分の少ない糖が発酵の安定化に寄与する

ティラージュリキュールがワインに与える影響

ティラージュリキュールの組成は、泡の細かさや持続性、発酵後の風味変化に影響します。酵母のオートリシスにより熟成中に旨みやトースト、ナッツのような複雑さが生まれます。また、発酵速度や温度管理が異なると、二次発酵の際の副生成物の出方が変わり、香りやテクスチャーに違いが出ます。ドサージュ(デゴルジュマン後に加える補糖溶液)とのバランスも最終的な味わいを左右します。

実務上の管理ポイント

  • 酵母の取り扱い:乾燥酵母は再水和や活性化を適切に行う
  • 衛生管理:添加時の微生物混入を防ぐため器具や容器を清潔に保つ
  • 温度管理:発酵中の温度を安定させることで発酵のムラを防ぐ
  • 混合と溶解:糖は完全に溶かし均一に混ぜることが重要
  • 記録管理:添加量や酵母ロット、発酵経過の記録を残す

酵母と糖の選び方の実践例

軽やかなタイプのスパークリングワインを目指す場合は、発酵力が安定して短期間に二次発酵を終える酵母と控えめな糖量を組み合わせます。一方、熟成香を重視するスタイルではオートリシスを促しやすい酵母とやや余裕のある糖量を選び、長期の瓶熟成を行います。どちらの場合も、デゴルジュマン以降のドサージュとの整合を考えて糖の設計を行うことが重要です。

比較表:商用酵母と野生酵母の特徴

シャンパーニュに関する補足

シャンパーニュというアペラシオンは、定義された原産地において、その土地特有のテロワールと、定められた栽培・醸造規定に基づいて造られたスパークリングワインにのみ使用が認められています。ティラージュリキュールの設計や瓶内二次発酵の管理も、このような規定や伝統のもとで行われます。

さらに知っておきたいこと

ティラージュリキュールは単なる糖と酵母の混合ではなく、ワインの最終的な方向性を決める重要な工程要素です。生産規模や目指すスタイルによって配合や酵母選定、管理方法は変わります。現場では小さな調整が大きな違いを生むため、テストバッチで検証してから本生産に移るのが実務的です。

まとめ

  • ティラージュリキュールは二次発酵を起こすための糖と酵母の混合液で、酵母特性と糖量が泡質や熟成に直結する。
  • 酵母は発酵力、耐圧性、オートリシス性などの特性で選び、商用酵母と野生酵母は安定性と個性で使い分ける。
  • 現場では酵母の取り扱い、衛生管理、温度管理、ドサージュとの整合を重視し、テストで最適化する。

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