赤ワインの製法|皮ごと漬ける理由と工程解説
赤ワインの製法を初心者向けに解説。皮ごと漬ける理由や発酵・マセラシオンの工程、熟成のポイント、他タイプとの違いまでわかりやすく紹介します。
赤ワインの基本
赤ワインは黒ブドウを皮や種とともに発酵させて造るワインです。皮に含まれるアントシアニンが色を与え、種や皮のタンニンが構造と渋みを生み出します。工程上は収穫→除梗・破砕→マセラシオン(浸漬)と発酵→圧搾→熟成→瓶詰めが一般的で、各工程の選択によってスタイルが大きく変わります。この記事では特に「皮ごと漬ける」理由と具体的な工程、科学的な背景に焦点を当てます。
皮ごと漬ける理由
- 色の抽出:皮に含まれるアントシアニンがワインの赤い色を決める
- タンニンの抽出:渋みや骨格を与え、熟成耐性を高める
- 香り成分の移行:皮や果皮の香り分子がワインに複雑さを与える
- 構造の獲得:種由来のタンニンやフェノールがボディを支える
- 発酵への影響:皮の存在は微生物相や発酵挙動に影響を与える
赤ワインの工程とポイント
| 工程 | 概要 | ポイント |
|---|---|---|
| 収穫 | 完熟度に応じて手摘みや機械で収穫 | 糖度・酸度のバランスを見て適期に収穫する |
| 除梗・破砕 | 茎を取り除き果実を潰す(全房発酵では一部茎を残す) | 除梗の有無でタンニンの質が変わる |
| マセラシオン(浸漬)+発酵 | 果汁を皮や種と接触させながら酵母で発酵させる | 色素とタンニンの抽出をコントロールする(温度・時間が重要) |
| 圧搾 | 発酵後にマスト(固形分)を圧搾して果汁を分離 | 圧搾の強さで渋みや苦味の抽出に差が出る |
| 熟成 | ステンレスタンクやオーク樽で熟成 | 樽香や酸素の入り方で風味が変わる |
| 瓶詰め | 清澄・濾過の後に瓶詰め | 熟成ポテンシャルやスタイルに応じた処理を選ぶ |
発酵と乳酸発酵(科学的説明)
発酵はワイン造りの中心的プロセスです。「発酵: 「酵母が糖をアルコールと二酸化炭素に分解」」という基本を押さえつつ、赤ワインでは皮や種の存在が風味と構造に大きく寄与します。発酵後に行われることが多いMLFについても覚えておきましょう。「MLF: 「乳酸菌によりリンゴ酸が乳酸に変換」」。この反応により酸味が柔らかくなり、乳酸香が付与されるため、赤ワインの口当たりが滑らかになります。どのタイミングでMLFを誘導するかは醸造家の判断で、樽熟成中に自然に進める場合や、タンクで制御する場合があります。
マセラシオンの種類と実務上の選択
- 伝統的な温かいマセラシオン:発酵熱で色とタンニンを効率よく抽出
- コールドマセラシオン:発酵前に低温で皮から香り成分のみを抽出(色やタンニンの過剰抽出を避ける)
- カーボニックマセラシオン(炭酸ガス浸漬法):果実内部で発酵が起こりフルーティーなスタイルを生む
- 全房発酵(whole-cluster):茎を一部残して発酵させ、スパイシーな風味や柔らかいタンニンを得る
熟成とスタイルの決定要因
熟成はステンレス、コンクリート、オーク樽などの容器選択がワインの表現に直結します。オーク樽は微量の酸素を通し、バニラやスパイス様の香りを与えますが、ステンレスタンクは果実のフレッシュさを保ちます。熟成期間や樽の新旧、樽サイズの違いも味わいに影響します。温度管理や酸素管理、必要なら澱(おり)との接触(澱と共に熟成)などを組み合わせて目的のスタイルを作ります。
ワインの種類(比較)
- 赤ワイン:黒ブドウを皮ごと発酵させて造る。色とタンニンが特徴。
- 白ワイン:主に白ブドウの果汁のみを発酵させて造る。酸味と爽やかさが中心。
- ロゼワイン:黒ブドウを短時間だけ皮と接触させて造る。軽やかな果実味。
- スパークリングワイン:発酵で出る炭酸を閉じ込めた泡のあるワイン。
- 酒精強化ワイン:発酵中または後にスピリッツを加えてアルコールを高めたワイン(例:ポート、シェリー)。
- オレンジワイン:白ブドウを皮ごと発酵させて造る。タンニンと複雑さが増す。
歴史的背景と出典
ワインの起源は約8,000年前にさかのぼるとされ、ジョージアでの考古学的調査がその根拠とされています(出典: 約8,000年前、ジョージア(考古学的調査))。近代ワインの評価が変わった事件としては1976年のパリスの審判があり、これは1976年にスティーブン・スパリュア主催のブラインドテイスティングで新世界ワインが注目を浴びた出来事です(出典: 1976年、スティーブン・スパリュア主催)。また品種や系統研究ではDNA解析が重要で、1990年代にはUCデービスのCarole Meredith博士らの研究がブドウ品種の遺伝的関係を明らかにしました(出典: 1996年にDNA解析で判明 ※UCデービス Carole Meredith博士の研究)。
豆知識:クヴェヴリ製法はジョージアで古くから用いられ、白ブドウを皮ごと発酵させる手法がオレンジワインの起源とも言われます(出典: ジョージアの考古学的調査)。
まとめ
- 皮ごとのマセラシオンが赤ワインの色・タンニン・香りを決める核心工程であること
- 発酵は「酵母が糖をアルコールと二酸化炭素に分解」し、MLFは「乳酸菌によりリンゴ酸が乳酸に変換」することで口当たりを整えること
- 工程の選択(マセラシオン方法、発酵温度、熟成容器)が最終的なスタイルに大きく影響すること