フィルタリングの種類|無濾過ワインの意味
フィルタリングの種類と無濾過ワインの意味を解説します。主なろ過法の特徴、メリット・デメリット、消費者向けの扱い方を紹介。
フィルタリングの役割
フィルタリングは主に以下の目的で行われます。1) 外観の透明化と安定した澄み具合の確保、2) 微生物や酵母・バクテリアの除去による発酵再開や劣化の予防、3) ボトリング後の沈殿や混濁を減らして流通時の安定性を高めること。工程の選択は目指すスタイルとテロワール表現の優先度、品質管理の方針によります。
無濾過ワインの意味
無濾過とは何か
無濾過は、ワインを瓶詰めする前に精密な濾過処理を行わないことを指します。場合によっては粗い濾過だけを行い、酵母やマイクロパーティクルを意図的に残すことがあります。理由は香りや味わいの微妙な構成要素、口当たりの厚みやテクスチャーを保ちたいからです。一方で澱(おり)や軽度の濁り、瓶内での軽い発酵再開などの可能性が高まります。
無濾過と表現の関係性について補足します。ラベルに「無濾過」と明記されている場合は、そのワイナリーが明確に濾過を抑えていることを示しますが、無濾過=未処理という単純な意味ではありません。人的要素(慣習・知識・継承)に基づき、澱引きや低温安定など別の処理で安定性を確保する場合もあります。
主なフィルタリングの種類
ケイソウ土濾過(ディアトマシャスアース)
ケイソウ土濾過は古くから使われる深層濾過の一種で、濾過層にケイソウ土を用いて細かな粒子や澱を捕捉します。ワインの透明化に優れますが、過度に行うと香りの立ちや口当たりに影響を与えることがあります。
シート濾過・プレート濾過(表面ろ過)
シートフィルターやプレート式はフィルターメディアを通して表層で粒子を捕らえる方式です。操作が簡便で目詰まり管理がしやすく、目的粒子の大きさに合わせた目の粗さが選べます。非常に細かい網目を使うと香味に与える影響があるためバランスが重要です。
クロスフロー濾過
クロスフロー(横流)濾過は膜を用い、ワインを膜面に並行に流すことで連続処理を可能にします。従来の濾過よりも効率的に微粒子を除去でき、微生物の除去精度も高められます。設備投資が必要ですが、精密な濾過が可能です。
滅菌ろ過(0.45μm/0.2μm等)
滅菌ろ過は微生物や酵母を物理的に除去する目的で用いられます。0.45μmや0.2μmの精度で濾過すると、ボトリング後の発酵再開リスクを大幅に低減できます。ただし極めて細かい濾過はワインの微妙な香り成分や口当たりを削ぐ場合があるため、用途に応じた選択が求められます。
清澄(ファイニング)と濾過の違い
清澄(ファイニング)は物質を添加してタンパク質や多価粒子を沈降させる工程で、濾過とは原理が異なります。両者は併用されることが多く、清澄で大まかな不純物を取り除き、濾過で微粒子や微生物を除く流れが一般的です。
| 方式 | 主な目的 | 除去対象 | 長所 | 短所 |
|---|---|---|---|---|
| ケイソウ土濾過 | 外観の透明化 | 澱、粗い粒子 | 強力な清澄効果 | 処理が荒いと風味に影響 |
| シート/プレート濾過 | 粒子除去の調整 | 可変(粗〜細) | 扱いやすく汎用性が高い | 目詰まり管理が必要 |
| クロスフロー濾過 | 効率的な微粒子除去 | 微粒子、酵母 | 高効率で再現性良好 | 設備投資と運用が必要 |
| 滅菌ろ過 | 微生物除去 | 酵母、細菌 | ボトリング後の安定化に有効 | 香味への影響の可能性 |
| 無濾過 | 風味・質感の保持 | 意図的に残す(澱等) | テクスチャーと複雑味を保てる | 澱・混濁、劣化リスクが上がる |
実務上の判断とメリット・デメリット
ワイナリーはテロワール表現と安定性のバランスで濾過方針を決めます。テロワール(土地・気候・人的要素の総体)を強く出したい場合は無濾過や軽い濾過を選び、輸出や長期保存を想定する場合は精密濾過や滅菌ろ過で安定化することが多いです。人的要素には慣習・知識・継承が含まれ、地域ごとの選択が品質に現れます。
消費者向けの扱い方
- 澱がある場合はゆっくり静置してデカンタする。沈殿をボトルから混ぜないよう注意する。
- 保管は温度変動の少ない場所で。高温や長期放置は瓶内変化を招く。
- 香りや口当たりを重視するなら、無濾過表示や生産者の方針に注目する。ナチュラルワイン系では無濾過が多い。
- 輸送や長期保存を想定する場合は、精密濾過の施されたワインが安定しやすい点を考慮する。
「シャンパーニュ」というアペラシオンは、定義された原産地において、その土地特有のテロワールと、定められた栽培・醸造規定に基づいて造られたスパークリングワインにのみ使用が認められている。
まとめ
- フィルタリングは外観・安定性・微生物管理のために行う。方式ごとに除去対象や風味への影響が異なる。
- 無濾過は風味やテクスチャーを保つ一方で、澱や瓶内変化のリスクを伴うため、保管や提供方法に注意が必要。
- 生産者の方針(人的要素やテロワール重視)と流通・保存の条件を考慮して、濾過の有無を選ぶと良い。