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バトナージュとは|シャルドネの味わいを決める技法

バトナージュとは|シャルドネの味わいを決める技法

バトナージュは澱(オリ)を攪拌して白ワイン、特にシャルドネの厚みや香りを引き出す醸造技法です。効果・手法・注意点を初心者向けに解説します。

バトナージュとは

バトナージュはフランス語で「棒でかき混ぜる」を意味し、ワイン用語では発酵後や熟成中に澱(オリ)を攪拌する工程を指します。澱は酵母由来の旨み成分やアミノ酸を含み、これをワインと接触させることで風味やテクスチャーが変化します。澱と接触させた熟成はシュール・リー(Sur Lie)と呼ばれ、バトナージュはその中の能動的な操作です。

基本的な工程

基本的には澱が溜まった樽やタンク内で棒(バトン)や機械で攪拌します。頻度は週に数回から月に数回までワインのスタイルや澱の量で調整します。手作業で行う場合は澱を均一に浮かせる程度に軽く混ぜます。機械的に行う場合はポンプで循環させる方法などもあります。

バトナージュの目的と効果

  • 味わいの厚みとボディ感が増す:澱由来の旨みが溶け出し、口当たりが豊かになる
  • テクスチャーの滑らかさが向上する:口中での粘性やコクが増す
  • 香りの複雑化:酵母由来のナッツやブリオッシュ、トーストのニュアンスが現れることがある
  • 酸とタンニンの印象が調整される:酸味の角が和らぎ、全体のバランスが整いやすくなる
  • 酸化還元バランスへの影響:適切に管理すれば安定感が増すが、過剰だと還元性の香りが出ることがある

補助的に、バトナージュは澱の成分をワインに溶出させるため、熟成ポテンシャルや厚みのあるスタイル作りに有効です。マロラクティック発酵(MLF)と併用すると酸味が穏やかになり、まろやかでバターやクリームのようなニュアンスが強まる傾向があります。

シャルドネとバトナージュ

シャルドネに適する理由

シャルドネは酸と果実味のバランスが取りやすく、樽熟成やシュール・リーとの相性が良いため、バトナージュによって得られるクリーミーさや豊かな旨みが品種の魅力を引き立てます。涼しい産地のシャルドネではミネラル感と酸を残しつつ厚みを加え、暖かい産地では果実味を補強してバランスを整えることが可能です。

テロワールとの関係

テロワールは「土地・気候・人的要素の総体」です。人的要素には「慣習・知識・継承」が含まれます。バトナージュの有無や頻度はこの人的要素の一部であり、同じシャルドネでもクリマやミクロクリマ、栽培慣行によって望ましいスタイルが変わります。たとえば石灰質のシャブリ系ではミネラル感を残すため控えめにし、ムルソー系では厚みを出す目的で積極的に行う、といった選択がなされます。

実際のやり方と注意点

  • 澱の量と状態を確認する:若い澱は効果が出やすいが、過剰な澱は嫌気性の問題を招く
  • 攪拌の頻度を決める:週数回から月数回。ワインの反応を見ながら調整する
  • 容器の違いを理解する:樽は酸素微量供給と木由来の香りを与え、ステンレスタンクは純粋に澱の効果を引き出す
  • 衛生管理を徹底する:雑菌や不適切な温度は品質低下の原因になる
  • テイスティングで評価する:香りや口当たり、酸の立ち方を定期的に確認する
容器効果の傾向向くシャルドネのタイプ
樽(新樽〜中樽)木由来の香り(バニラ、トースト)と微量の酸素供給で複雑さが増す樽熟成を活かしたリッチで樽香を欲するスタイル
ステンレスタンク澱由来の旨みとテクスチャーが純粋に出る。酸の鮮度を保ちやすい酸を重視しつつ厚みを加えたいクリーンなスタイル
大樽/中立樽酸化傾向を抑えつつ柔らかな膨らみを出す長期熟成志向で穏やかな樽感を求める場合

ペアリングの考え方

バトナージュで厚みやクリーミーさを増したシャルドネは、料理との組み合わせで「同調」「補完」「橋渡し」のいずれかの効果を狙えます。

  • 同調:樽感と香ばしさが響き合うローストした白身や鶏肉
  • 補完:酸味が脂の重さをリフレッシュするクリームソースの魚介料理
  • 橋渡し:果実味がフルーツソースやアプリコットのデザートとつなぐ

注意事項とリスク

バトナージュは万能ではありません。過度に行うと還元香(還元性の表現)が出る場合があります。また澱の量や衛生状態を誤ると望ましくない微生物が増えるリスクがあります。さらに、樽と組み合わせる場合は木由来の香りが強くなりすぎて品種の個性やテロワールがマスクされることがあるため、目的とバランスを明確にしてください。

シャンパーニュというアペラシオンは、定義された原産地において、その土地特有のテロワールと、定められた栽培・醸造規定に基づいて造られたスパークリングワインにのみ使用が認められています。

まとめ

  • バトナージュは澱とワインを接触させることでシャルドネに厚みと複雑さを与える技法である
  • 目的・容器・頻度を明確にし、テイスティングで変化を確認しながら行うことが重要である
  • 過度の攪拌や管理不足は還元や品質低下を招くため、衛生管理とバランスの把握が不可欠である

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