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MBAの樽熟成ワイン|複雑な味わいのスタイル

MBAの樽熟成ワイン|複雑な味わいのスタイル

マスカット・ベーリーAの樽熟成ワインを解説します。樽由来の香りや構成、造りのポイント、合わせる料理や甲州との違いをわかりやすく紹介。

マスカット・ベーリーAの基本情報

マスカット・ベーリーAは日本で広く栽培される黒ブドウ品種です。果皮が薄く柔らかな果実味が特徴で、若いうちはチェリーやベリーの香りが前面に出ます。日本の気候に適応しやすいため、多様なスタイルで醸造されます。赤ワインとして早飲みタイプから、樽でしっかり熟成させるタイプまで幅があります。専門用語は初出時に説明を加えます。例えば、樽熟成はオーク樽で一定期間寝かせる工程で、香りやタンニン感に影響します。

樽熟成がもたらす効果

オークが加える香りとニュアンス

樽熟成ではオーク由来のバニラ、トースト、スパイス、ココアのような香りがワインに加わります。新樽を使うとこれらの要素が強く現れ、古い(ニュートラル)樽では果実味を邪魔せずゆっくりと熟成させる傾向があります。樽材の種類(フレンチオーク、アメリカンオークなど)とトースティングの度合いで香りの性格が変わるため、醸造家は狙いに応じて選択します。

酸味・タンニン・構成の変化

樽熟成はワインの酸とタンニンのバランスに影響します。樽内での緩やかな酸化やマロラクティック発酵(MLF)により酸味が穏やかになり、まろやかな口当たりが生まれることがあります。マロラクティック発酵(MLF)はリンゴ酸が乳酸に変換される過程で、酸の輪郭が柔らかくなるためです。また樽由来のポリフェノールが収斂感に寄与し、余韻や骨格を強めます。

マスカット・ベーリーAの樽熟成スタイル

マスカット・ベーリーAの樽熟成にはいくつかの方向性があります。果実味を活かす軽めの樽熟成、しっかり新樽を使って香りと構成を強めるアプローチ、樽とステンレスを併用するハイブリッドなどです。以下に代表的な違いを示します。

樽タイプ特徴向く表現
新樽(新しいオーク)バニラやスパイスが明確に出る。構造が強くなる。重厚感、スパイシーさを出したい場合
古樽(ニュートラル)香りは控えめで果実味を保つ。穏やかな熟成感。果実の個性を残したまま熟成させたい場合
小樽(容量小)樽の影響が早く強く出る。酸化の進みが早め。短期間で樽風味を付けたい場合

造りのポイントと注意点

樽熟成におけるポイントは、原料の熟度、マセラシオン(果皮との接触時間)、MLFの有無、樽の種類と熟成期間の組み合わせです。マスカット・ベーリーAは若い果実味が魅力なので、樽香が強すぎると果実の表情が隠れる恐れがあります。したがって新樽比率を抑える、短期熟成にとどめる、ステンレスタンクとのブレンドでバランスを取るなどの工夫が多く見られます。

テイスティングのポイントとサービス

色調は明るめのルビーからガーネット。香りはチェリーやラズベリーに加え、樽由来のバニラやトーストが重なります。味わいは果実の甘みと程よい酸、樽からのタンニンやスパイス感が続きます。サービングは16〜18℃程度が目安で、場合によってはデキャンタ(デキャンタ)で15〜30分ほど空気に触れさせると香りが開くことがあります。グラスはバルーン型グラスが適しています。

料理との組み合わせ

  • 同調:ローストした鶏肉やポークの香ばしさと樽由来のトースト香が同調する
  • 補完:トマトソースの酸味がワインの果実味を補完し、全体のバランスを整える
  • 橋渡し:きのこクリームソースの旨味とワインのスパイス感が橋渡しとなる

例えば照り焼きやグリル料理は樽由来の香ばしさと同調し、トマトやきのこの料理はワインの果実味やスパイスを補完します。脂のある料理にはワインの酸味が脂の重さをリフレッシュする役割を果たします。これらは味覚の同調・補完・橋渡しというフレームで考えると合わせやすいです。

参考:甲州との比較と補足情報

参考までに甲州についての要点を挙げます。甲州は白ブドウ品種に分類され、さらにグリ系品種(灰色ブドウ品種)に該当します。甲州はシュール・リー製法、樽熟成タイプ、オレンジワインなど多様なスタイルで造られます。山梨の勝沼などには89のワイナリーがあります(出典:国税庁「酒類製造業及び酒類卸売業の概況」令和6年12月)。また甲州は2010年にOIVに登録されています(出典:OIV公式)。マスカット・ベーリーAとは色調や造りの方向性が異なりますが、両者とも日本の食文化に合わせた柔軟なスタイルが楽しめます。

用語解説:シュール・リーは澱と接触させた熟成法で旨味とコクを得る手法です。マロラクティック発酵(MLF)は酸味を穏やかにする発酵過程を指します。

まとめ

  • 樽熟成でマスカット・ベーリーAは果実味に香ばしさと構造を加え、複雑な味わいになる
  • 樽の種類と熟成期間の組み合わせで仕上がりが大きく変わるため、新樽比率やMLFの有無でバランスを考える
  • 料理とは同調・補完・橋渡しの観点で合わせると、照り焼きやきのこ、トマト料理など幅広く楽しめる

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