中級用語辞典5分で読める

クローンとは|ブドウ品種の系統と選抜

クローンとは|ブドウ品種の系統と選抜

ワインの「クローン」とは何か、選抜の目的と方法、テロワールとの関係を初心者向けに解説します。生産者と消費者それぞれの視点で役立つ実務ポイントも紹介。

クローンとは

クローンとは、同一のブドウ品種(例えばピノ・ノワールやシャルドネ)内で、芽生えや形質が均一な個体群を指します。ブドウは接ぎ木や挿し木で増やすため、ある苗木由来の遺伝的特徴が系統として残ります。気候や土壌に対する適応性、果実の熟度や香りの傾向、樹勢や収量特性などがクローンごとに異なることがあります。

クローンの選抜と目的

選抜(クローン選抜)は、望ましい形質を持つ株を見いだして増やす作業です。目的は主に次の3つに集約されます。品質の安定化、ブドウ栽培の経済性向上、そして栽培上のリスク軽減です。具体的には成熟の早遅をそろえることで収穫作業を効率化したり、病害に対する耐性が高い系統を増やしたりします。

  • 収量(多い・少ない)
  • 樹勢(強い・弱い)
  • 成熟時期(早熟・晩熟)
  • 香りの傾向(花香・果実香など)
  • 病害耐性(ウドンコ病、灰色かび病など)

クローンがワインに与える影響

クローンはブドウの収量や熟度に影響します。熟度が揃うと醸造条件を一定にしやすくなり、品質が安定します。また、香りや果実味の傾向がクローンごとに異なるため、同じ品種でもクローンの組み合わせによりワインの表情が変わります。ただし、クローンだけで味わいが決まるわけではありません。土壌や気候、人的要素と合わせて評価する必要があります。

クローンと台木(ルートストック)の違い

ブドウ栽培では、台木(ルートストック)と接ぎ合わせることが一般的です。クローンは接がれる上部の「品種側」の系統を指します。一方で台木は根の部分の系統で、耐乾性や耐塩性、鉱質吸収の特性に関わります。クローンと台木を組み合わせることで、畑の条件に合わせた最適化が可能になります。

選抜の方法と現代技術

従来は長年の観察と経験に基づき良い個体を選んで来ました。現在は形態や生育データに加え、DNA解析や病原体検査を用いることが増えています。DNA解析により遺伝的な系統間の違いを把握し、交配や保存に活用できます。ただし、遺伝情報は一要素に過ぎず、栽培環境と合わせて判断することが重要です。

観点メリット留意点
品質成熟の揃いで醸造管理がしやすくなる単一クローンに偏ると多様性が失われる
経営収量や樹勢を調整し生産性を最適化できる気候変動時に脆弱になる可能性がある
病害対策耐病性の高い系統でリスクを低減できる完全な耐性は期待できず総合管理が必要

クローンとテロワールの関係

クローンはテロワールと相互に影響します。ここでテロワールとは「土地・気候・人的要素の総体」です。人的要素には「慣習・知識・継承」を含みます。クローンの持つ形質が、土壌やミクロクリマ(畑レベルの局所的な気候条件)とどのように結びつくかでワインの個性が現れます。

  • テロワール: 土地・気候・人的要素の総体
  • クリマ: 自然条件と歴史的利用が結びついた最小単位のテロワール区画
  • ミクロクリマ: 畑レベルの局所的な気候条件
  • アペラシオン: 法的に保護・規定する原産地呼称制度
  • リュー・ディ: 品質区分を伴わない歴史的な畑名

例えば同じクローンでも、標高や排水性、日照量が異なる畑では果実の成熟や香りの出方が変わります。人的要素、つまり何世代にもわたる慣習や栽培の知識がクローンの選択と管理に影響します。結果としてクローンはテロワールを表現するための素材の一つとなります。

「シャンパーニュ」というアペラシオンは、定義された原産地において、その土地特有のテロワールと、定められた栽培・醸造規定に基づいて造られたスパークリングワインにのみ使用が認められている。

生産者と消費者の視点で知っておきたいこと

  • 畑ごとのミクロクリマを観察してクローンを選ぶ
  • 多様なクローンを組み合わせてリスク分散する
  • 台木との相性を試験的に確認する
  • ラベルでクローン情報が記載されることは稀だが、生産者情報を参考にする
  • 同一品種の産地違いを飲み比べるとクローンとテロワールの違いが分かる
  • 生産者の栽培方針(多様性重視か単一選抜か)を見ると味わいの傾向が予想できる

よくある疑問と簡潔な回答

クローンで味が劇的に変わるか

変化はあり得ますが「劇的に」は限定的です。クローンは香りや成熟傾向に影響しますが、最終的な味わいは土壌、気候、栽培管理、醸造の組み合わせで決まります。

古い樹と新しいクローン、どちらが良いか

一概に良し悪しは言えません。古樹は根の深さや土壌との関係が成熟している利点があります。新しいクローンは特定の形質で優れることがあります。畑の目的やテロワールの特性に応じて選ぶのが適切です。

まとめ

  • クローンは同一品種内の系統で、成熟や香り、樹勢などに影響する
  • 選抜は品質安定や経営効率、病害対策が目的だが多様性も考慮する必要がある
  • クローンはテロワール(土地・気候・人的要素の総体)と結びついてワインの個性に寄与する

さらに深く知るには、生産者の技術解説や畑見学でクローンや台木の使い分けを確認するのが有効です。ラベル情報に加え、生産者の考え方を見ると飲み比べがより興味深くなります。

関連記事