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2025.06.10

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Z世代はなぜ「飲まない」のか?

(出典:RaboResearch “The real reasons Generation Z is drinking less alcohol”, Apr 2025) Z世代(1997年以降生まれ)は、過去のどの世代よりも「飲まない」傾向がはっきりしています。その理由は「健康志向」だけではありません。RaboResearchの最新レポートでは、Z世代のアルコール離れは、社会構造・テクノロジー・経済背景・人口構成といった多角的な要因によるものと分析されています。

📱 スマホとSNSがもたらした「飲みにくい」時代

Z世代のティーンは、スマートフォンやSNSの浸透により、かつてのような「人目を忍んで飲む」ことが難しくなっています。親は子どもの居場所をリアルタイムで把握でき、SNSでの投稿が学校や親に見つかるリスクも高いため、飲酒=高リスクという感覚が強まっています。実際、アメリカの高校生の飲酒経験は、1991年の64%から2024年には33%まで半減しました。

📉 所得の低さと購買力の低下

Z世代の可処分所得はまだ低く、酒に使えるお金がそもそも限られています。30歳未満の世帯の酒類支出は、過去10年間で約3分の1減少し、収入に占める割合も1.1%から0.74%に低下しました。Z世代の支出は「節約志向」であり、プレミアム・テキーラやクラフトワインへの出費は今のところ控えめです。

📊 女性とマイノリティが中心の新たな消費層

Z世代では、25歳以下の飲酒者の過半数を女性が占めており、またZ世代全体の50%が白人以外(アジア系、黒人、ヒスパニックなど)です。これらのグループは伝統的にアルコール消費が少ない傾向があるため、世代全体としての消費量も自然と抑えられています。

🍷 ジャンルごとの明暗:ワインは苦戦、スピリッツに希望?

ワインは特に白人中高年男性をターゲットにしてきた背景があり、多様化するZ世代には響きにくい側面も。一方で、スピリッツ(特にフレーバー付きやRTD:「Ready To Drink」の略。開けてそのまま飲める缶チューハイ等のアルコール飲)はZ世代の中でも浸透が早く、アルコール市場の一部では明るい兆しも見られます。

💬 健康志向は「主因ではない」

Z世代の飲酒離れの理由としてよく挙げられる「健康志向」ですが、実際にはリスク認知の変化は見られず、若者の46%は今も「週末に5杯以上飲むのは危険」と考えており、2008年と同じ割合です。むしろ社会的なプレッシャーや飲酒の「価値の低下」が、若者の生活の中から酒を遠ざけているといえます。

🧠 酒を「アイデンティティの一部」にしない世代

Z世代は、初めて酒を飲む時期が遅く、大学や初職での飲み会文化も希薄なため、アルコールが「大人の象徴」としての地位を持たなくなっています。つまり「酒がなくても社交はできる」「酒を飲まない自分=普通」という感覚が広がっているのです。

🍾 結論:Z世代はずっと飲まないのか?

若いうちは確かに「飲まない」Z世代ですが、将来的に全く飲まないわけではありません。年齢を重ね、収入が上がり、結婚や子育てといったライフステージに入るとともに、飲酒量が自然と増える可能性もあります。とはいえ、アルコールがアイデンティティに深く根付いたミレニアル世代以前とは異なり、「飲む理由」が変わることは確かです。

🎯 アルコール業界がZ世代にアプローチするには、「なぜ飲まないか」を理解し、多様な価値観とライフスタイルに寄り添う新たな提案が求められています。

今後は女性やマイノリティの視点を取り入れた製品設計・マーケティング、そしてノンアル飲料との上手な共存が鍵となるでしょう。