EyeCatch

2025.11.13

トレンドワイン知識

アジアン・ガストロノミーの裏技:失敗しないワインペアリング術

世界的なワインエキスパート、リチャード・ヘミングMWは、自身の著書でアジア料理とワインのペアリングに関する「失敗知らず(Fail-Safe)」のボトルを推奨しています。多種多様なアジアの風味と調和するこれらのボトルは、ガストロノミーの探求を続ける愛好家にとって、確実なワインの選択肢となります。ここで紹介するワインは、極端な個性を持たず、幅広い風味と共存できる「穏やかなる強者」です。

失敗知らずの白ワインは、主張しすぎないエレガンスな風味がキーポイント

アジア料理、特に辛い料理にはリースリングが定石とされていますが、ヘミング氏はその高い酸度がチリの辛さと衝突するリスクを指摘し、「万能なオールラウンダーではない」と一線を画します。

代わりに推奨されるのは、以下の4つの要素を満たす、抑制されたエレガンスを持つスタイルです。

  • ドライであること
  • 酸味が控えめであること
  • 中立的な風味であること
  • 樽の影響が少ないこと

【推奨銘柄の傾向】

  • ソアヴェ・クラシコ (Soave Classico): ニュートラルな風味と柔らかな酸味が、幅広いアジアの食材と調和します。

👇単なるフルーティーなソアヴェと思うことなかれ!バランスのとれた風味はまさに万能選手

イナマ / フォスカリーノ ソアーヴェ・クラッシコ

イナマ / フォスカリーノ ソアーヴェ・クラッシコ 2021

¥4,750 (税込)

W05コクありバランス系白ワイン

白 - 辛口ガルガーネガ100%

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イタリア/ヴェネト州 /ソアーヴェ

  • ドウロのドライ・ホワイト:ポルトガルのドウロで造られる白ワイン。
  • ハンター・ヴァレー・セミヨン:若いうちは果実味が控えめでアルコール度数も穏やかなため、多様な風味を受け止める「空白のキャンバス」として機能します (Hemming, 2025)。
  • ブルゴーニュ・マコネ地区のシャルドネ:さわやかでありながら尖りすぎない酸味と青リンゴのような果実味があり、アジア料理の背景として適しています。

👇コスパ&風味完璧のキングオブマコン

アンドレ・ボノーム / ヴィレ・クレッセ トラディション レ・ピエール・ブランシュ

アンドレ・ボノーム / ヴィレ・クレッセ トラディション レ・ピエール・ブランシュ 2023

¥4,340 (税込)

W05コクありバランス系白ワイン

白 - 辛口シャルドネ100%

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フランス/ブルゴーニュ地方 /マコネ /ヴィレ・クレッセ

失敗知らずの赤ワイン:タンニンを抑えた柔軟性

赤ワインは、タンニン(渋み)や苦味がアジア料理と衝突しやすいため、白に比べてペアリングが難しいとされます。ヘミング氏は、タンニンや酸味が柔らかく、熟していながらも過度ではない果実味を持つスタイルを推奨します。

「タンニンと苦味がマッチングの妨げとなるため、赤ワインは白ワインよりもアジア料理とのペアリングが難しい」 (Hemming, 2025)。

【推奨銘柄の傾向】

  • リオハ(トラディショナルなレセルバ):CVNEやラ・リオハ・アルタなどが造る伝統的なレセルバ・スタイルは、樽熟成由来のココナッツやバニラの複雑味が、ナシレマッやマッサマンカレーといったアジア料理のココナッツ風味と響き合います。

👇まさに文中に出てきたクネのレセルバ

クネ / インペリアル レセルバ

クネ / インペリアル レセルバ 2018

¥6,440 (税込)

R08がっしり骨太系赤ワイン

赤 - 辛口テンプラニーリョ85%、グラシアーノ&マスエロ(カリニャン)&ガルナッチャ15%

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スペイン/ラ・リオハ州 /リオハ・アルタ

  • コート・デュ・ローヌ:柔らかい構造、熟した果実味、そしてしばしば感じられるドライハーブのキャラクターが、オクラカレー、ラープ・ムー、ガドガドなど幅広い料理と驚くほど調和します。
  • 熟したスタイルのピノ・ノワール:酸味が構造上の主要な特徴でない、より豊満でアルコール度数が高めのスタイルを選びます。南アフリカやカリフォルニア、オタゴなど、温暖な産地のものが適しています。

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スリー・シーヴズ / ピノ・ノワール カリフォルニア

スリー・シーヴズ / ピノ・ノワール カリフォルニア 2022

¥2,180 (税込)

R02華やか&赤ベリー系赤ワイン

赤 - 辛口ピノ・ノワール

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アメリカ/カリフォルニア州

インヴィーヴォ / セントラル・オタゴ ピノ・ノワール

インヴィーヴォ / セントラル・オタゴ ピノ・ノワール 2023

¥4,160 (税込)

R02華やか&赤ベリー系赤ワイン

赤 - 辛口ピノ・ノワール100%

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ニュージーランド/セントラル・オタゴ地方

唯一の例外:ドライ・シェリーという「究極の鍵」🔑

白、赤のペアリングで避けてきた「極端な風味」を持つワインの中で、唯一の例外としてヘミング氏が激賞するのが、ドライ・シェリー(フィノ、マンサニーリャ、アモンティリャード)です。

ドライ・シェリーは「万能の鍵」に相当する存在であり、あらゆる料理の扉を開けます。

【シェリーが万能である理由】

  • 低酸度:温暖な気候で育つため、標準的なシェリーは酸度が低く、チリの辛さと衝突しません。
  • 旨味(Umami)の存在:「シェリーにキノコ、サワードウ、そして醤油のような風味を与える旨味の影響」が、アジア料理の礎である旨味と共通の響きを生み出します (Hemming, 2025)。

ドライ・シェリーは、極めて美食的な喜びをもたらし、アジア料理とのペアリングにおける「常識を覆す最強の選択肢」となります。

参考文献

Hemming, R., 2025. Matching wine with Asian food, part 2 – fail-safe bottles. [online] JancisRobinson.com. Available at: https://www.jancisrobinson.com/articles/matching-wine-asian-food-part-2-fail-safe-bottles [Accessed 23 October 2025].