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2025.06.07

ニューストレンド

ワイン消費が歴史的低水準に―変わる世界のライフスタイルと市場構造

世界中でワインのグラスを傾ける回数が、静かに減少しているようです。OIV(国際ブドウ・ワイン機構)が発表した2024年の統計によると、世界のワイン消費量は2億1400万ヘクトリットルと、実に1961年以来の最低水準に落ち込みました。前年比では3.3%の減少で、3年連続の減少となります。 背景には、長引くインフレによる購買力の低下、若年層の飲酒離れ、そしてライフスタイルや価値観の変化が挙げられています。OIVのジョン・バーカー事務局長も「世代交代と消費者行動の変化」を今後の鍵として注視しています。

アジア市場における日本の位置付け

日本は、中国に次ぐアジアで2番目のワイン市場とされるものの、2024年の消費量は前年比4.4%減の310万ヘクトリットルに留まり、世界16位という順位でした。1人当たりのワイン消費量はわずか2.8リットル、750mlボトルに換算して3.7本程度と、欧州のワイン文化が根付く国々とは大きな差があります。

ポルトガルでは年間61.1リットル(81.4本)を1人で消費し、続くイタリアが42.7L(56.9本)、フランスは41.5L(55.3本)と、トップ3の国々はワインを生活に深く根付かせているのがわかります。

中国は消費量が19.3%も減少し、1人当たりの消費量は0.5リットル(0.7本)と、上位20か国の中で最も低い結果でした。

2011年、中国ワイン市場はピークに達し、売上は約60億元(約1,200億円)に達しました。しかし、その後、経済の低迷とともにワイン市場も縮小し、2024年にはその半分以下の売上にまで落ち込んでいます。

生産も同様に減少傾向

消費の減少に合わせて、生産量も減少傾向にあります。2024年の世界のワイン生産量は2億2580万ヘクトリットルと、こちらも1961年以来の低水準。2年連続での大幅減で、前年の10%減に続き、今年も4.8%減となりました。

特にフランスは24%減の3610万hlとなり、1957年以来の最低水準。一方で、イタリアは気候条件に恵まれ、15%増の4410万hlとなり、スペインを抜いて再び世界最大の生産国となりました。

未来を見据えて

ワイン業界は今、大きな曲がり角に差し掛かっています。長期的な消費の低下が続けば、生産体制や流通、販売戦略も根本から見直す必要があるでしょう。特に日本のように潜在的な市場として注目されながらも、消費が伸び悩む国にとっては、「飲み方」「楽しみ方」を提案する文化的アプローチが重要になってきます。

今後の鍵は、品質や価格に加えて、「体験」や「物語」といった要素がどれだけ人々の心を動かせるか。ワインが生活に寄り添う存在として再び注目される日を、私たちも楽しみに待ちたいところです。