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2025.05.20

産地情報ヴィンテージ情報

試練を乗り越えたヴィンテージ──ボルドー2024年の生育シーズン総

ボルドー2024年の生育シーズンは、まさに自然との闘いでした。冬から春にかけての記録的な降雨、春の霜害、執拗なベト病、そして不安定な夏の天候と、まるでパンチを繰り返し受け続けたかのような一年。しかし、最終的にはブドウが力強く持ち直し、希望をつなぐヴィンテージとなりました。

厳しい幕開け:冬から春の異常気象

2023年10月から2024年3月までに降った雨は計914mm──過去に例を見ないほどの多さでした。畑の作業が思うように進まず、剪定や棚の準備が遅れたことで、スタートから不安が募る展開に。

発芽は4月6日と例年通りでしたが、その直後に寒波が襲来し、19・22・23日に霜害が発生。芽吹いたばかりの新芽が大きなダメージを受けました。

春の過酷な試練:霜と病害、光の欠如

5月の降水量は126mmと通常の80%増。日照時間も極端に少なく、開花期は不均一に。ベト病は例年より早く、4月末から猛威を振るい、開花不良(クルール)や小粒果実(ミルランダージュ)を引き起こしました。

特にメルローには大きな影響があり、収量低下は避けられない結果に。

夏の回復と希望:遅れたヴェレゾンと集中力の回復

6月・7月も雨がちで根の酸欠や養分不足が問題に。葉の赤変も見られ、ベト病は依然強く、フロンサックやポムロールでは6月18日に嵐の追い打ちまで。だが、7月下旬から乾燥し穏やかな気候が到来し、ようやく回復の兆しが。

しかし、ヴェレゾン(色づき)は平均より3週間も遅れ、8月初旬まで始まらず。糖の蓄積も遅く、酸度は高いまま。水分による希釈リスクを抱えつつも、酸のおかげでアロマの鮮度は保たれていました。

収穫期:雨と冷気に翻弄された9月、粘り勝ちの10月

9月に入るとまたもや雨──特に前半10日間で58mmと例年の3倍。気温も平均より2℃低く、2022・2023年とは対照的な涼しい秋に。これによりメルローの収穫は一部で9月18日から開始され、グレーロット(灰色かび病)の影響も。

一方、カベルネ・ソーヴィニヨンは後半の乾燥期に恵まれ、じっくりと成熟。粘り強く待った生産者は、構造・色・香りすべてに優れたブドウを収穫できました。

白ワインとソーテルヌ:酸が主役の仕上がりに

白ワイン用のソーヴィニヨン・ブランとセミヨンは、それぞれ8月20日と28日に収穫。酸度は高く、pHはわずか3.1。スッキリとした酸味が際立ち、緊張感のある味わいが期待されます。

ソーテルヌでは8月下旬の雨がボトリティス(貴腐菌)を呼び込み、9月末から10月中旬にかけて3度の収穫を実施。糖度が高く、酸もしっかり──クラシックでピュアなスタイルに仕上がっています。

総評:困難を越えて得た“複雑さ”と“選別の技”

ボルドー2024は、生産者の技量が如実に反映される年です。メルローにとっては過酷な環境でしたが、カベルネ系品種にとっては後半の回復が追い風に。選果の徹底が品質を左右し、酸が全体の骨格を支えています。

“自然と人の粘り強さ”が生んだこのヴィンテージ──落ち着いたタンニン、フレッシュな酸、そして選び抜かれた果実のハーモニーが、これからの熟成とともにどんな表情を見せてくれるのか、楽しみでなりません。🍇🍷✨